56話。大勝利。美少女たちから、取り合いをされる。
「ティルテュよ。おぬし、本気でカルと結婚したいなどという戯言を申すつもりか? わらわを敵に回したいのか?」
アルティナが怒り混じりの笑顔で告げた。
「ちょっと待ったぁあああ! カル兄様と結婚したいなら、妹である私の許可を得てよね! 答えは絶対にノーだけど!」
「カル様とは、ミーナが結婚するんですにゃ!?」
飛竜に乗ったシーダとミーナがやってきた。
その後ろには、5体の冥竜が続く。
どうやら、海竜王の軍団と戦って全員無事に生き延びたようだ。
「アルティナ様! 海竜王を滅ぼすとは、誠にお見事でございます!」
冥竜ゼファーが歓喜の雄叫びを上げた。
「うむ! 実際に倒したのはカルじゃがな!」
「さすがは、我が主! このゼファー、お仕えできたことを誉れと思います」
「ひぃええええ!? 冥竜の軍団だわ!?」
ティルテュが及び腰になる。冥竜に殺されかけた彼女は、彼らに苦手意識があるようだ。
「さ、さすがに冥竜王殿の逆鱗に触れるようなことはできぬな……」
オケアノス王も、空を飛ぶ冥竜たちの威容に言葉を詰まらせた。
「王様、アルティナの言うことは冗談だと思いますが、ティルテュ王女との結婚は見送らせていただけると助かります。僕はまだ未成年ですし……」
結婚とかは、まだ考えられなかった。
なにより、今は魔法の探求をすることが楽しい。領主の仕事もあるし、恋愛までしている余裕は無かった。
「それでは、【オケアノスの至宝】ともどもティルテュめをお側に置いていただくことは、できませぬか? 至宝の力は、カル様のお役に立つでしょう。なにより敵に奪われては、【根源の刃】の力が無効化される恐れがありますからな」
「そう! そうですよね、お父様! カル様の近くで、その偉業をお手伝いし、あわよくば結婚を……!」
ティルテュがその申し出に、全力で賛同した。
って、彼女は思考がだだ漏れになっている。
本気で、僕と結婚したいのか? 困ったな。ただ……
「……至宝の力を使えるのが人魚族の王族に限定されるなら、ティルテュの身柄が狙われる危険もありますしね。彼女はアルスター島で保護したいと思います」
「やったぁ! カル様に守っていただけるなんて、幸せだわ!」
僕が同意すると、ティルテュが僕に抱擁してきた。
おわっ、ちょっと、この不意打ちは心臓に悪い。
「ええぃ! カルと将来結婚するのは、わらわであるぞ! 許可なく、ひっつくのはやめぃ!」
「アルティナの許可なんて必要ないよ! カル兄様!」
「うぉ!?」
「きゃあ!?」
シーダが飛竜からダイブしてきて、僕に抱き着いた。
「海竜王を倒すなんて、カル兄様はやっぱり最高の兄様だ!」
「って、危ないぞ、シーダ!? 怪我したらどうするんだ?」
「だって、1秒でも早くカル兄様と、喜びを分かち合いたくて! 私もね、大活躍したんだよ。海竜を20匹近くは、丸焼きにしてやったかな?」
うお。それはスゴイ戦果だ。さすがは、元ヴァルム家の跡取り候補。
「海竜王の軍勢は、みんな逃げ出したみたいですにゃ! ミーナは、カル様がすごすぎて、もう発情が抑えきれてないですにゃ!」
ミーナもダッシュしてきて、僕に飛びついてきた。
ぐふっ!?
「おのれ、こうなったら、わらわも自重せんのじゃ!」
さらにアルティナも、他の娘たちを押し退けて、僕を抱き締めてきた。
美少女たちにもみくちゃにされて、もう何がなんだかわからない。
「……カルよ。どうやらアルスター家は、世継ぎには困らなそうだな。ところで、すまぬが、この俺の話を聞いてはもらえぬか? もしかすると、一刻を争うやも知れぬ」
父上が神妙な顔で告げた。
そうだ。聖竜王についての話を父上から聞きそびれていた。
「わかりました。キミたち、ストップ! これから父上と大事な話があるからね」
「「はぁーい!」」
暴走していた女の子たちは、素直に頷いた。
そして、父上は驚くべきことを話した。
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