第128話 アークスSIDE お前はガキだ。


「ハァハァ、神じゃ無ければ死んでいたわーーっ」


「うん、そうかも知れないね。だけど軍神だから大丈夫だよね?」


「死なないだけで痛みも苦痛もあるのだ! 心臓を貫かれた苦痛はただ事じゃない」


「アークスってマモンだった時はセレスお父さんにマグマに突っ込まれたよね? それに比べたら大した事無いんじゃない?」


「セレスと俺は強敵と書いて友と読む。そういう関係だ! 戦って五分だからこそ分かり合える物なのだ。 俺はお前を成長させてやりたかったがどうやら無理のようだ……」


「アークス……」


「残念ながら、多少のハンデを貰っても俺はお前と戦えない」


「そう……なんだ……」


「すまないな」


「僕は……」


「何故しょげる!」


「僕はきっと本当の友達が作れない……」


「アホか! 友達の居ない俺が言う事でないが、セレスを見て見ろよ! お前みたいな規格外は別だが、あの世界じゃ最強に近いし、伴侶の中に女神も居るじゃないか? だが、沢山の仲間に囲まれているだろう?」


「確かに……」


「身分や能力、力で友達になる訳じゃないだろう」


「そうかな……」


「お前の親父のセレスの親友のゼクトは俺やお前から見たらどうだ? 簡単に殺せる位の虫けらだ。だが、セレスにとっては親友だろう? お前の母親だってそうじゃないか? 女神も居ればただの人間もいる。その全員をお前の親父のセレスは愛しているし愛されているんじゃないか?」


「そうだね、セレスお父さんは誰とでも仲良くなれて……羨ましい」


「あのな……お前だって妻ならもう何人も娶っているだろうが!」


「うん……だけど、僕が半神だから……」


「ぐわっははははっ! それは無い。 俺を見てみろ! 軍神なのに伴侶はおらん」


「あはははっ、そうだね。なんだかゴメン」


「お前は幾ら強くても能力が高かろうとガキだ。まずは……そうだな。皆に相談しろ。そこからで良いんじゃないか?」


「相談?」


「ああっ、お前には最高の妻がいるじゃないか? ヘラはあれで母性の女神だ。お前が真摯に相談するならきっと真剣に考えてくれる。 妲己だってカーミラだって長い人生を生きているんだ。お前から心開いて相談すればきっと答えをくれる。エルザにロザリアにフルールだって随分変わった人生を生きてきたんだ。子供のお前に助言だって出来る筈だ」


「そうだね、確かに僕は1人じゃないね。悩んだらしっかり相談すれば良いんだよね」


「そうだ……お前は凄い奴だがまだガキだ。 幾らでも大人を頼れ。 大体こういう話は俺は得意ではない! お前の親父セレスの方が多分適任だ」


「そうだね……」


「それに戦いだって、まだまだ強い奴がいる。孤独なんて思う必要は無い」


「アークスより強い存在なんて居るの?」


「創造神様には敵わぬ。だが、その前にそちらの世界には冥界竜バウワーが居る。 それでも満足できなければヘラを頼れば、きっと強い相手も探して貰える」


「ヘラさんに?」


「ヘラが居た神の世界には相当な強者がいると聞く……どうしてもというなら相談してみた方が良いぞ」


「そうか……そうだね」


「セレナ、お前は半神と言っても子供だ。能力は高いが、経験がまだ無い。 戦いだけじゃなく色々な経験を積むべきだ」


「アークス……だけど、僕、イシュタスママの子だから、なんでも出来るよ」


「苦手な物があるかも知れないだろう? 現に剣作りでは創造神様に及ばないだろうが……きっと出来ない事、苦手な事もある筈だ」


「そうだね、アークスありがとう」


「そろそろ創造神様の用も終わった頃だろう。さぁ行くが良い」


「うん行ってくる」


普通は『出来る事』を一生懸命探すのに……『出来ない事』を探すのか……神の子と言うのも難儀な物だな。

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