第60話 ロザリアの場合 負けてなければ充分ですね。
う~ん困りましたね。
私の考えていたのは、ほぼフルールと一緒。
同じように『カズマ』のレシピは手に入れておきましたが、これじゃ無駄ですね。
時間も余り無いし、此処からの予定変更は難しいですね。
このままじゃ、フルールと良くて同率、悪ければ負けます。
1番手を取るのが得策でした、ですがこれはどうにも出来ないので仕方ありません。
カズマの看板はクリームシチューですから、他のメニューじゃまず勝てません。
それに、クリームシチューならセレナ様が完璧に作れる事が解った今、今更同じ物で作っても勝負になりません。
フルールがクリームシチューを選んだ時点でこのレシピは使い物にならない。
本当に困りましたわ。
セレナ様のお父様はどうやら『カズマ』の創業者の味を知っていてセレナ様自身もその味を再現できる今、もう究極や至高なんて味を作っても無駄です。
フルールの料理を食べたセレナ様は…たしか...
『これフルールが作ったんだ! 美味しい…まるで父さんや僕が作ったみたいだ』
そう感動していました。
『母さん』とは言いませんでした...
もし、此処からの巻き返しを考えるなら『母の味の再現』それしか無いような気がします。
母の愛情の籠った料理、これで勝負ですね。
◆◆◆
コハネ、ジムナ村、どちらが良いのでしょうか?
前にセレナ様から聞いたお話ではお母さまの出身はジムナ村。
その後はコハネで暮らしていたと聞きました。
悩みます…海鮮のコハネか、鍋物のジムナ村。
恐らく、そのどちらかがベストな筈です。
情報は力です。
それじゃ頑張りますか…
◆◆◆
まずはコハネ名物の海鮮。
その中でも、美味とされる刺身。
どうあがいても無理ですね…此処に運んでくるまでに腐ってしまいます。
それでは、此処、帝国で手に入る魚ではどうか?
残念、絶対に見劣りしてしまいます。
となれば、ジムナ村のしかありませんわ。
しかし…あんな変な物で良いのでしょうか?
ですが、正当な物じゃ勝負になりません。
それなら、これで勝負するしかありませんね。
◆◆◆
この料理を振るう舞うには森に来る必要があります。
「なんで、夜に森になんて来ますの?」
「まぁ、獣以外はまず襲って来ないし、この中で獣に負ける奴は居ないから良いんじゃね」
「それじゃ、私の料理はこれです!」
「成程、よく思いついたね! 母さんや父さんが言っていた奴だ、これをやるの?」
「はい」
「鍋に只のスープが入っているだけですわ…具の無いスープが料理なんですの?」
「ロザリア、試合放棄か?」
「違います…これがジムナ村の名物、森の闇鍋です」
「本当に良く知っているね!凄いよ! 母さんや父さんの故郷の料理だよ! 僕はまだ食べた事ないんだ…それで時間制限は?」
「時間は2時間でどうです?」
「良いね、それじゃ皆も良い?」
「どう言う事ですの?」
「何をするんだ」
「コホン、説明させて頂きます!これはジムナ村名物、森の闇鍋と言いまして、時間を制限しまして皆で食材を採取、狩ってきて鍋で煮込んで食す物ですね…解りましたか?では皆さん、よーいドンです!」
「それじゃ、行ってくるね」
「食材は自分達で持ってこい…そう言う事ですわね」
「なかなか、面白いな、解った」
私は鍋の番をしながら待っていて、皆さんが持ってきた食材を調理して鍋に突っ込むだけですね。
◆◆◆
「狩って来たぜ」
一番最初に帰って来たのはエルザですね…
「狩って来たって…それ」
「ああっ熊だ! 大型の獣は駄目って事は無いよな?」
態々調理しにくい大型の獣をわざとですね…上等です。
「そこに置いておいてください!解体調理しますから」
「解体できるのか?」
「熊は無いですが、私やフルールは、今まで何人もやってますからね、簡単ですよ!」
「何人」
「聞かない方が良いですよ?」
さてと解体、解体…熊位ならどうにかなりますね…
「ロザリア、採取してきましたわ」
「キノコ?」
「ええっ、ロザリアならキノコの選別位は出来ますわね?」
私を試すつもりですね…
「フルールやりましたわね、これは食べられますね、これは毒キノコじゃないですか? これに至ってはオーガすら死にますよ!」
「流石はロザリオ、正解ですわ」
「フルール、お前これ私達じゃ無くてセレナ様も食うんだぞ、何をやっているんだ?」
「エルザ、毒キノコかどうか解らないのはこの三人の中じゃ貴方だけですわ」
「そうね!」
「二人ともいい根性しているよ!」
「いけない…僕が最後か!」
「セレナ様はウサギと山菜ですか?」
「森の闇鍋は、無難な物が一番だよ…変な物を入れると自分の首を絞める事になるからね」
「それじゃ、調理させて頂きますね」
集まった材料を調理して煮込んで完成ですね。
◆◆◆
「うん、出汁が沁みていて美味しい」
「さぁ、さぁセレナ様お代わりがありますからじゃんじゃん食べて下さいね」
「ありがとう」
「ロザリア、確かに美味しいですが、これは料理と言って良いんですの?」
「確かに食材を他人に集めさせた時点で1人で作った物じゃないよな」
「ジャッジをするのはセレナ様ですよ」
「う~ん、確かに美味しいし、楽しかった!うん手料理で良いんじゃないかな? だけど、どう評価するかは難しいから、今回の勝負から除外かな」
「除外ですか?」
「うん、だって同じ味はもう二度と再現出来ないでしょう?」
「そうですか…確かにそうですね」
まぁ仕方ないですね。
除外ですから負けじゃありません。
これで充分です。
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