第204話 ゼクトSIDE 逃げた剣聖
しかし、凄い街だな。
魔族と聖職者が一緒に暮らす街。
一応は、魔族は魔国に帰った…そう言う事になっているのだが、大魔王で神竜と崇められているセレスが此処に居る為に、この国に入り浸っている状態らしい。
そして教皇様達も自分達の信仰対象のセレスが此処に居るから、おのずと此処に入り浸っている。
俺からしたら『討伐を依頼した存在』と『討伐される存在』が仲良く暮らしている国なんて、本当に信じられないな。
しかし、セレスはいつ帰ってくるんだ。
母さん達の機嫌が悪くて、とばっちりを喰らいそうで怖い。
それはさて置いて…
「朝だ、朝だーよ希望の朝だーーーっ!さぁさぁ働こうぜーー」
「朝だ…朝です…」
「朝ですよ!リダさん!起きて下さいな!」
しかし、此奴魚釣りや遊びが絡まないと朝本当に起きないな。
「う~ん…えっゼクト、いやだな僕のあられもない姿を覗こうとして」
まぁ確かに此奴はパンツにシャツと考え方によってはセクシーな姿で寝ている。
だが、涎を垂らしてだらしなく寝る姿はそれを全部台無しにしている。
「はいはい、幼馴染だから見飽きたわ」
「酷いよ…昔はこれでも恋仲だったじゃん僕たち」
「そんな事もあったな…だが今のお前も俺もそんな気は無いだろう? それにそんな気があるならマリンもルナも連れて来ない」
「それはそうだけど?だったらこんな朝早くからなんなのさ…僕まだ寝ていたいんだけど…」
「お前な、そんな自堕落でどうするんだよ! 俺達は勇者パーティ『希望の灯』だったんだぞ!それにお前のファンも居て『麗しの剣聖』なんて言われていたじゃないか…泣くよファン」
「ううっ、解ったよ…それで僕にいったい何をさせようっていうのさぁ」
「それはな…」
◆◆◆
「ハコネーズにようこそ!」
「ハコネーズ…ようこそ!」
「ハコネーズ…なんで僕がこんな事しなくちゃいけないのさぁ」
「煩いな!冒険者ギルドでこの食堂のヘルプがあったから受けたんだ、仕方ないだろう」
「なんでもう少し真面な仕事うけないのさ」
「リダ良いか? 俺達はS級だ、だからこそ他の冒険者の仕事を奪っちゃならない。他の人が嫌がる事やしない事をしてやれば良い…と俺は思う。特にこの国は平和だから金になりそうな仕事は少ない、俺達は金に困らない位はあるんだから遠慮するもんだ」
「いや、それなら僕たち働かないで良いじゃん」
「リダ、良いか? 世の中はセレスのおかげで平和だ!これから先、大きな討伐はもうない?!だから俺達もこれからはこの平和な社会で生きる事を考えなくちゃならないんだ。討伐もせいぜいが知能の低い魔物や野生動物位だ。だから色々やってみないか? きっとやりたい事が見つかるぞ」
「そうだけど…平和な世界なら僕働かないで良いじゃん」
「お金を稼ぐ必要があるだろうが」
「いや、僕はお金そんな欲しく無いし…」
「飯はどうするんだ? 金が無くちゃ食えないだろう」
「自給自足するから良いや…魚釣って獣を狩るよ」
「住む所は」
「洞窟に住むからよいや」
「服はどうするんだ」
「偶に狩りで儲けたお金で買うから良いよ」
糞っ、此奴、確かにサバイバルに向いているんだよな。
「あのな…」
「それに僕はそんな事ならないよ? セレスや皆が僕を見捨てる訳ないもん」
セレスは過保護だから、確かにリダを見捨てたりしないよな。
「確かにそうだ…だがな」
「まぁ良いよ、ゼクトが働きたいって言うなら僕も付き合うよ」
いや違うぞ、俺はお前が真人間になる為にな。
「ゼクト…サボりは駄目」
「ゼクト様、おしゃべりしていないで手を動かして下さい!」
「解ったよ…」
その後夕方まで働いて1人銀貨1枚。
まぁまぁの仕事だな。
「それじゃリダ、明日も頑張ろうな!」
「…うん」
◆◆◆
次の日
「リダ、朝だ朝だよ…なっ」
あの野郎逃げやがったな…
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