第201話 メルとやっぱり開かない魔導書 ゼクトSIDE


今度はメルと模擬戦か…


メルはリダと違い直接攻撃は出来ない。


賢者だから、魔法攻撃が主体となる。


『それに手加減してくれ』と言われた。


とは言え…別に訓練じゃ無く『偽りの魔導書』が使えれば良いのだから、軽くいくか?


「それじゃ行くよ!」


「さぁ来い!」


ゆっくりと剣を振り下ろしていく。


その剣をメルは魔導書で受け止めた。


「凄いな、その魔導書…まさか俺の剣を受け止めるなんて」


「これは本としてだけでなく『盾』としても使えるんだよ!凄いでしょう」


俺の一撃は普通の奴なら簡単に受け止められない。


騎士でも無ければ剣を落としている。


それが手加減したとはいえメルが受け止めた。


恐らく、なんらかの魔法が掛っているのは解った。


「いや、自慢は良いけど、本は開かないのか?」


「う~ん開かないみたい」


聞いた話ではサヨさんとセレス二人掛かりで掛かっても無理だったんだよな。


それじゃ行くか?


これしか無いだろう…


「これが勇者が使う奥義…光の翼だぁぁぁぁーーっ」


「ちょっと待って、待ってよ! そんなの死んじゃうよ…死んじゃう」


大丈夫だ、狙ったのは本。


精々指か手が吹き飛ぶだけだ。


吹き飛んでもマリアが居るから大丈夫だよな。


まぁ狙いは本だから、多分それすら無い。


光が集束していき鳥の形なる。


本来は数羽の鳥を放つが今回は1羽だけだ…


「行けぇぇぇぇぇーーー」


ドガがガガガッーーガーーン!


大きな音を立てて光で出来た鳥が弾かれた。


嘘だろう…


確かに手加減はしたが、これは『対魔王』ようの技だ。


まさか、弾かれるとは思わなかった。

「ゼクト…酷いよ…死んじゃうかと思ったよ」


「ゴメン、ちゃんと本を狙ったから大丈夫…な筈だ」


「筈だって…」


「ああっ、此処にはマリアが居るから、万が一があっても平気だろう?」


「だからって痛いのには変わらないじゃない」


「そうだな、だが、その本はもう開く事は無いんじゃないかな? 手加減したと言っても勇者の最強の技を受けても開かないんじゃ、恐らく『本当の危機』でも無いと開かない可能性が高いな。もう魔王討伐もしないのだから…諦めても良いんじゃないか?」


「そんな、折角魔導書が私を選んでくれたのに…」


「そのまま防具として使っても良いんじゃないか? 聖剣を使って無いとはいえ、俺の奥義を受けて無傷…防具としても最高じゃないか?」


「あはははっ、そうだね、諦めが肝心なのかな?」


「諦める事は無いけど、難しいと思うな…後はそうだ! 折角魔族とも仲が良くなったのだから、魔族に…いや魔王にでも相手を頼んで見るか? 案外いけるかも知れないな」


「…そこ迄しなくて良いよ」


「いや、折角だから」


「いいってば!」


「そうか? その魔導書の持ち主はメルだから、メルが納得するなら、それで良いんじゃないか? この世界はセレスのおかげで平和だ! もう勇者も聖女も剣聖も賢者も必要ないんだ…無理して使う必要も無いだろう」


「そうだね…」


メルはその後いじけたように『のの字』を書き始めたが…


俺には何もしてあげられないな。

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