第95話 11人。



「セレス様おはようございます! 今日は良い朝だね、僕頑張るから」


リダがにこやかに笑っている。


時間は早朝。


多分、再び素振りでも始めるのかも知れない。


昨日の夜、悩んだ末にフレイに弟子入りして家臣の座を確固たる物にしていた。


だが、そのせいでマリアとメルの機嫌が悪い。


いつも朝はゆっくりな二人が俺の起きるのに合わせて起きていた。


しかも目には隈が出来ている。


「あの、セレスちょっと良いかな? なんでリダが家臣になっているの?」


「私も納得できないかな?」


「マリア、メル…顔が怖いよ、ほら二人とも治療院をするんだろう? その時は資金援助を…」


「それはそれで良い話ですが…私は家臣にもなれないのですか? 付き合いは長いのに…」


「リダに比べたら、私一生懸命頑張っていたよ、此処に居れないと言うから、頑張ったのに酷いよ」


言われると思ったが、まさか翌日にこうなるとは思わなかったな。


「それで、二人ともどうしたいの?」


「あの…それなら私も家臣の扱いで良いから一緒に住みたいなぁと思って」


「うん、私もどうにかならないかな?」


仕方が無いのか…


「本当にそうしたいのか? それなら構わないけど、リダは今、フレイに師事しているんだぞ、その生活に慣れたら、ミサキから大剣の使い方を学んで、最後はハルカから細剣を学ぶ予定だ…そして仕事はマリアーヌの護衛になる…まぁ、戦闘は少ないけどもしもの時は剣を使う事もある…同じ生活が出来るのか?」


「え~と」


少しオドオドし始めたな。


リダは確かに努力して無かった。


だが、もう後が無いから『背水の陣』で頑張ろうと決意した。


今の俺とリダの関係は男女の関係じゃ無く『元の親友』になった。


その証拠に気取らず『僕』といっている。


それが出来るかだ。


「もし、マリアやメルが家臣になりたい、それなら構わない。 長い付き合いだから、コハネの騎士にはすぐにするよ! だが、それを選ぶなら、マリアはセシリアつきで静子さんと一緒にヒーラーとして、メルはマリアーヌとサヨと一緒に事務方の仕事をする事になる、それで構わないの?、それに恐らく暫くしたら、王都を離れてコハネかジムナ村に住もうと思っているんだ…独立の方が自由があって良いんじゃないか?」


「確かに、王都での暮らしの方が楽しいかも知れないけど、やっぱりセレスと一緒の方が良い…本当にこれから頑張るから『家臣』の方でお願い出来ないかな」


「私も事務を頑張るよ、教わる事は変わるかも知れないけど、一から頑張るからお願い出来ないかな?」


「解った…それじゃ『家臣』の方向で考えるよ」


その後、静子達に甘いと言われたが…これは恐らく運命だ。


オークマンの妻は11人。


俺の方は妻では無いが嫁が4人+3人で7人…そこに1人加わって8人。


3人足したら11人だ。


嫁では無いが…11人、この数字には覚えがある。


『10人の妻でも凄いのに、11人目だ、これが凄いと言わずに何が凄いと言うんだ』

『俺もいつか家族を守れるような…ああいう男になりたい』


俺はそう思ってしまった。


恐らくこの影響が出ている気がする。


願った事が叶う黄竜の力…これは本当に幸運なのだろうか?


幸運と言いながら…自分ではどうする事も出来ない。


随分と意地が悪い『幸運』な気がする。


俺は平凡な毎日を送りたい。


『明日こそ平凡で幸せな一日が送れますように』


果たしてこの願いは叶うのだろうか?


叶えば良いな。







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