第93話 勘違い



「私はセレス様の奴隷ですから、生涯貴方に仕えさせて頂きます」


あの時のカジノのディーラーの女の子は未だにストーカー状態だ。


名前はシャロン、金髪でゴージャスな女性だ。


今日も朝から元気に訪ねてくる。


もうこれ以上、女性関係は増やしたくないな。


黄竜の幸運を掴む力は何処に行ったのか?


だが、少し俺にも心当たりがある。


まさかと思うが俺が…『俺もいつか家族を守れるような…ああいう男になりたい』そう思ってしまったからなのか?


まさかな…そうでは無いと信じたい…今の7人で精いっぱいだ。


大体ハーレムなんて普通に無理。


今の俺の妻は皆が30歳前後で顔見知り、俺を除いても仲が良いから成り立っている。


何処かの小説の様に、全くの他人を集めてハーレムを作るなんて『小説や漫画の主人公みたいな奴』じゃなくちゃ無理だ。


嫌な話だが、本等で知る限り、大体のハーレムを持った人間は一度は大きな問題を起こしている。


とある勇者なんて…ハーレムのいざこざに巻き込まれて刺された。


俺の知る限り、ハーレムで上手くいっている奴はオークマンしか居ない。


彼奴は『不幸な女奴隷』を買って幸せにするからこそ、それが出来る。


その証拠に…彼奴の奴隷には貴族令嬢もエルフも居ない。


全員が普通の人だ。


ヤバい…俺がオークマンをカッコ良いと思うと…嫁が増えたりしないよな…考えすぎか。


◆◆◆


しかし、本当に毎日来るな…


「あの、セレス様、何故彼女を拒むのでしょう?」


「マリアーヌ、俺の嫁は今の7人充分、もうこれ以上増やすのは無理だよ」


「あの…セレス様、セレス様はオークマンの生き方に感化され可笑しくなっているのですわ! 何故奴隷=婚姻なのでしょうか? 彼女は『私はセレス様の奴隷ですから、生涯貴方に仕えさせて頂きます』そう言っているのですわ…使用人で良いと思いますわ」


「そうそう『奴隷なんて消耗品』そういう考えもあるよ…帝国じゃ今は廃止されたけど、少し前まで奴隷闘士なんか居て戦われていた位だよ」


そう言えばそうだな、マリアーヌもフレイのいう事は最もな話だ。


女奴隷=恋人


オークマンや村で嫁を斡旋していたから…すっかり勘違いしていた。


裏切らない使用人として受け入れれば良いだけだ。


「それで、従者として必要かどうかだな?」


「居たら楽しいと思いますわ…ディーラーですからカードゲームを始め、きっと娯楽の知識は豊富だと思いますわ」


「そうだね、楽しませてくれると思うな」


二人に背を押されて静子達4人にも相談したが『従者』が居た方が良いという事になり…当人が自らくるのだからと受け入れることにした。


◆◆◆


何時もの様に朝からシャロンは押しかけてきた。


「私はセレス様の奴隷ですから、生涯貴方に仕えさせて頂きます」


「もう負けたよ…そんなに奴隷になりたいなら受け入れる事にした」


「セレス様、本当に、本当にありがとうございます…私一生仕えますね」


確かに彼女は今迄、婚姻とは一言も言っていない。


予め連絡をして奴隷商人に来て貰っていた。


こういう時に英雄は楽だ、話をすれば優先してきて貰える。


「ああっ期待している」


「ありがとうございます」


書類だけでなく、シャロンは奴隷紋が良いと指定した。


「それではセレス様、血を少し下さい」


俺は指先を少し切って血を出し、奴隷商の差し出した小皿に垂らした。


そこに特殊な液体を奴隷商は垂らし、シャロンの背中に紋様を書いていった。


「奴隷紋を刻みこみました…正式にこれでシャロンは貴方の物です」


本来奴隷紋の刻み賃に手間賃を加えて金貨2枚渡すと奴隷商は俺に礼を言って帰っていった。


「セレス様、これで私は貴方の物です、なんなりとお申し付け下さい」


「それではシャロン、今日からマリアーヌ付きの侍女をお願いする、無茶は言わないから皆が楽しめるような娯楽を考えてくれ」


形上マリアーヌの侍女だが、実質皆の侍女だ。


最も、家事が出来る者が多いから、本当に娯楽だけ考えれば良い…案外楽な仕事かもしれない。


「あの、セレス様、私は…」


「シャロンさん、それではいきましょうか?」


「はい…」


シャロンはそのまま、マリアーヌに連れられていった。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る