第85話 魔王討伐はあっさり終わった。
10人での共同生活が始まった。
元勇者パーティの3人は朝からこき使われている。
とは言っても村で生活していれば当たり前の事だ。
村の女性は街の女と違って朝から晩まで働いている。
朝食作って畑仕事をして夕食まで作る…その上で夜の相手までして、子供が生まれたらしっかり子育てまでする。
俺が4人を好きになったのは、そんな所もある。
美人で働き者で優しい…そんな人好きにならないわけが無い。
だが、此処からが問題だ。
俺は前世も恋愛結婚だ…お見合い結婚の経験が無い。
まぁ、幼馴染の親をと思われるかも知れないが…4人を好きになるのに『良いお母さんだな』→『素晴らしい人だな』→『良いなこの人』→『好き』という様な子供ながらの心の変化があった。
前世は兎も角、この世界では『村社会という小さな社会』で生活している…すると狭い社会の中で生活しているから…周りは皆が顔見知り…家にかぎを掛けないで、安心して外出できる位、閉鎖的な世界だ。
簡単に言うなら、静子達4人も、マリア達3人も10数年一緒に過ごしてきている。
だが、今度の三人は違う。
マリアーヌは王女だし、セシリアは前の聖女、しかも教会で特権階級
フレイに到っては王女で元剣聖だ。
『住んでいる世界が違う』
静子達に頼んで三人と一緒の時間を作ってもらった。
三人に自分がどう思っているのか…思いを全部話した。
「あの…まず地位については元王女と言われましても、英雄であるセレス様の方が立場は上ですわ…この世界で一番『偉い』と教皇様も言ってますわ…家事と言われたら出来ませんが、政治的なフォローなら、女ですが帝王学を学びましたのでお力になれると思います」
「私は元聖女ですが、魔王と戦うまでは旅から旅、そのあとは修道女ですから、セレス様と変わりませんよ、マリアさんと同じような感じですね…炊き出しも手伝っていたし、修道院では家事を学びましたから一通りは出来ますよ」
「まぁ私は姫なんて柄じゃないよ、剣聖に選ばれてからはひたすら剣を振るっていたからな、魔王に負けてからは騎士団に所属していた…だからまぁ、騎士とか冒険者となんら変わらないよ」
「そうか…それなら良かった…」
第一関門はクリアした…此処から距離を詰めるのは少し時間が掛かるだろうな…
◆◆◆
ぎこちないながらも生活をしているとロマリス教皇から連絡があった。
『魔族側から停戦の申し出があった』との事だ。
内容を聞くとかなり人間側に有利な話だったので…その話は直ぐに纏まった。
ロマリス教皇曰く、俺がマモンと戦い勝った事が大きく作用したらしい…
300年の停戦…これでゼクト達も完全解放され、恐らく数代先まで戦うことは無い。
ゼクトの次から生まれる勇者は幸せだな…そう思っていたら、世の中世知辛い…『勇者保護法』は停戦期間中は停止になるそうだ。
まぁ、魔王と戦うのが前提の話の特権だから当たり前ともいえる。
だが『英雄保護法』は継続するらしい。
あっけない話だ…あれ程、魔王、魔王と言っていたのに、只の通信水晶での連絡一つで終わってしまった。
今になって思えば戦う必要なんてあったのか?
そう思えてならない。
魔王は基本魔王城から出ない…そんな相手倒しても大きく変わる事なんて無いかも知れない。
だが、大きな問題はこれで終わった。
世界平和…魔王討伐は信じられない程あっさり終わった。
此処からは…俺は、他の問題をひとつひとつ解決していくだけだ。
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