第73話 VSマモン 新生


これでも届かないの…


私は800年待った…


マモンと戦える『魂』を持つ存在を…


ようやく現れた強い魂…女神である私はこの世界に直接手が出せない。


最早魔王すら凌ぎ強くなったマモン。


ただ、純粋に『強い』


純粋な破壊の権化…このまま行くとやがては『神』に至る。


恐らくは『破壊神』になり神界にすら来るかも知れない。


セレスという存在に最後の望みを賭けた。


ルディの記憶の一部を夢として見せた。


勇者になると目をつけられるから、敢えて勇者のジョブにしなかった。


恐らく、もう此処迄の魂は二度と現れない。


セレスが勝てないなら…きっと『人間』という存在の中で勝てる存在は生み出せない。


この世界は終わりかも知れない。


『邪神』の勝利…


それでこの世界は終わる…


私が長い時を得て作り出した『勇者』を凌ぐ『英雄』


最後の希望が…いま終わる。


最早私にはどうする事も出来ない。


もしマモンが神界に来たら…女神の全てを持って必ず始末します。


例え、それが禁忌に触れても…


無力な私を、世界を守れなかった私に出来る唯一のそれが償いです。


◆◆◆


「イシュタス、なに絶望的な顔をしているのかしら?」


「これよ、これ、もう終わりが近いわ」


私はイシュタスの世界を覗き込んだ。


「そうね…確かにもう終わりが近いわ」


「解っているわ…絶望よ…」


イシュタスが何を言っているか解らないわ。


なんで絶望しているのかしら?


◆◆◆


両手は無い。


足も片足折られた。



「すまない…セレス」


「嫌ぁぁぁぁぁー――セレスが、セレスが死んじゃう」


「セレス…手が…あああぁぁぁぁー-」


「ごめんなさい、ごめんなさい…」


目が霞んできた。


幼馴染の悲しそうな声が聞こえている…近くでワギャンが死んでいる。


せめて、一撃…これじゃ死んでも死にきれない…


ごめん…俺は、何も出来ない….意識が遠のく…


せめて…せめて一撃…マモンが近づいてきた。


「よくもまぁ、此処迄戦ったものだ、足一本しかもう動かせない…終わりだ」


最後まで止めない。


俺が出来る攻撃は…


足一本で飛び跳ねた…俺に出来る最後の攻撃…絶対に効かない。


だがやる、噛みついてやる。


「ほぉ~噛みつくのか…良いぜ、それがお前の最後の攻撃だな、受けてやる…だが俺の体はミスリルでも傷がつかない、無駄だ」


マモンに噛みついた…砕けたのは俺の歯だ。



マモンが俺を殴る…物凄く痛い。


体が軋み、骨が折れたのが解る。


ひたすらマモンが俺を殴る…物凄く痛い…


可笑しい…なぜ体が千切れない。


簡単に腕を引き千切るマモンが殴っている。


甚振っているのか?


激痛が走るけど…まだ俺は生きている。


ビチビチッビチビチッビチビチッ


肉が裂けて骨が折れていくのが解る。


だが、俺は死なない…可笑しい。


マモンは手加減をしていない。


「ハァハァ…何故、お前は何故死なないんだー-っ」


「ああっセレスが…マモン殺すなら一思いに殺してやってくれ」


「私達も殺せー――っ」


「慈悲の心が無いの…虫けらというなら一思いに殺してあげてー-っ」


「私達人間は、そんな殺し方しない、普通に殺すわ…」


痛い…体中の肉が潰れて顔も陥没した…まるでアンデッドみたいだ。


だが、死なない。


「違う、俺は此奴を楽にしてやろうと思っているが、此奴が何故か死なねーんだぁぁぁー-」


マモンの指が見えた。


もう歯も無い…だが死ぬまで抵抗をしてやる。


歯の無い筈の口で俺は噛みついた。


これじゃただ咥えただけ…えっ…歯があるのか噛めている。


「痛ぇぇぇぇぇー――っこの離せっ離しやがれー――っ」


俺の歯が生えてきている。


まるで初めて歯が生えてきた時みたいにムズムズしている。

離すものか…


マモンがブンブン俺を振り回す…


離さない。


近くの建物に体を叩きつけられた。


だが、絶対に離さない…もっと強く、もっと強く噛む。


「うがぁぁぁぁー――っ、痛ぇぇぇぇぇー-痛ぇぇぇぇー-よー-」


初めてマモンが痛がっている。


噛む、噛む、噛む、力強く、もっと、もっと強く噛む。


マモンが俺を殴ってきた。


ドムドムドムドムッ…可笑しい…


痛いけど、肉が千切れていない。


俺の体がまるでゴムの様に固く強くなっている気がする。


音が変わっていき、そうまるで素手でタイヤを殴っている様な音に変わっていった。


ブチブチブチッ…


マモンの指が千切れた。


「もぐもぐがぶがぶっゴクリッ…案外美味いな」


「うがぁぁぁぁぁー-っ貴様、俺の、俺の指を食べやがったなー――」


マモンの右手の指3本、俺は食いちぎり食べていた。


可笑しい…俺は…立てている。


しかも体の痛みも引いていて、潰れた顔も元通りだ。


あんなに怖かったマモンが、今は…怖くない。


それ処か…美味しそうに見える。


「マモン…お前美味しそうだな…」


「お前、何者だ…なんだ、その体は…」


両方の腕が一瞬で生えた。


見た目は、前となんら変わらない。


だが、この体は、今迄と全然違う…


簡単に言うなら見た目は同じだが数百倍の筋肉を小さな体に詰め込んだ状態が近いかも知れない。


「只の人間だが?」


俺は走っていきマモンを思いっきり上に向けて殴った。


マモンの体は小さな山の高さ位まで浮かび上がった。。


それに合わせて俺もジャンプしてそのまま肘打ちをくらわした。


マモンはそのまま落ちていき地面にクレーターが出来た。


「貴様、普通の人間の訳あるかー――っ」


「俺の正体なんか関係ないだろうが…お前は強い奴と戦いたいのだろう…行くぞっ」


俺はマモンの首筋に噛みついた。


「止めろー――っ、貴様...痛てぇぇぇぇー――」


マモンの肉はいとも簡単に噛みちぎれた。


「もぐもぐっゴクリッ、ぷはぁー-っ」


マモンに対する恐怖はいつの間にか無くなっていた。


















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