第41話 獣人少女とセクトール



カイト達にも街に遊びに行って貰った。


「しかし、まぁ随分と変わった奴隷ばかりを紹介するんだな…しかも適格だ、セレス…お前本当に奴隷を買ったことは無いのか?」


「無いな…」


今回は偶々、親しい人達だから傾向が解るだけだ…


見知らぬ相手じゃこんな事は出来ない。


「それじゃ次の子を連れてくる」


「ああっ、頼むよ」


◆◆◆


「あのよ…セレス、本当に俺迄良いのか?」


「ああっ、別に構わないよ、これだけ周りに世話をしているのにセクトールおじさんにだけ紹介しない訳にいかないでしょう」


「ああっ、だが俺は静子を奴隷として売り飛ばし、財産を使い果たした挙句…税金が払えず鉱山に送られた…その税金を肩代わりして貰っただけでも悪いのに…嫁迄…本当に良いのか?」


「ああっ、そうなる前のあんたは、良い人だった…新しい嫁には、昔俺にしてくれたようにしてやってくれ」


「ああっ、解った、必ずそうしよう、約束だ」


「それじゃ、少し待っててくれ」


◆◆◆


「なぁ、セレス本当に良いのか?今までのは兎も角、これは…最悪の奴隷だぞ! 主人の資質が試させれるんだ、余程愛し続ける自信がなければこの獣人は手にするべきじゃない…俺だって避ける相手だ」


獣人の中でも、最も嫉妬深い獣人…それは犬系だ。


他の獣人はほぼ野生だからか執着心が薄い者が多い。


だが、犬系の獣人は、狼系の獣人の強さに目をつけた魔族や人族が躾けや改良をして従順になる様に作ったのだ…そういう伝説もある。


半人工的に作られた彼らは長い年月を掛け、主人に従順になる様にされた。


その時に、意図せぬ感情が彼等に芽生えた。


それが『嫉妬』だ、主人に対して従順な代わりに、他の者を可愛がろう物なら…大変な事になる。


最悪な場合は、主人へ過激な暴力を振るう事すらある。


故に『単独でしか奴隷』にしにくいとされる。


まぁ、稀に多数引き連れている場合もあるが、その場合は元から兄弟だったり、元の犬獣人と引き合わせ相性が良かった…そういう可能性が高い。


『1人の女性しか愛さない覚悟が必要』


そして、その中でも一番厄介なのは『チワワンという種類』だ。


この獣人は忠誠心が高く、主人の為なら竜種すら恐れない。


その反面独占欲は異常な程強い。


だが、獣人族の中でも、各段と可愛い。


浮気さえしなければ、綺麗な美少女が命がけの忠誠を示してくれる。


最高だよな…


セクトールにはうってつけだ。


◆◆◆

時は少し遡る。


「お兄さん、私を買ってくれるの?」


「ああっ、俺じゃ無くて別の人に紹介するつもりだ」


「ああっ、そうなんだ…私がどういう種族か理解して買うならそれで良いよ…ただ私は…」


「聞いたよ、前の主人とその恋人に大怪我をさせたんだろう?」


「まぁね…私はさぁ『自分が常に1番愛された状態』じゃないと駄目なんだ、それさえ守ってくれれば良いよ…それさえ守ってくれれば、夜伽だって、戦闘だって凄く役に立つと思う」


「まぁ、夜伽は兎も角、戦闘は無いな、相手はただの村人だから」


「へぇ~村人なんだ…それで大丈夫なのかな…浮気とかしないかな」


「すると思う…」


「それ、不味くない? 多分、私暴れちゃうし、噛んだり殴るよ」


「それで良いんだよ、浮気癖を君になおして貰いたいんだ、あと出来たら他の悪い癖もね」


「え~と大丈夫かな?」


「大丈夫だよ…君たちは本当は凄く優しいよね…君たち犬族の獣人が本気で暴れたなら、手足は食いちぎられ、首なんて簡単に折ってしまうだろう? 冒険者でも余程上級じゃ無ければ殺せる…確かによく暴力的だと言われているけど…死人が出ない、これは君たちが優しいからだと思う…実際に話で聞く限り前の主人も軽傷だったしな」


「なんだか、凄く私達の事詳しいし…理解してくれているんだね…お兄さんが私を買わない? 私愛してくれるなら凄く尽くすよ」


「凄く嬉しいけど、俺は嫁持ちだから無理だな」


「確かに…まぁ良いや、どうせ私は種族的に買い手がつきにくいから、このままだと鉱山送りだもん…この話は内緒にして浮気しない様にすれば良いんでしょう?」


「ああっ頼むよ…奴隷紋も刻まない様にするから、思う存分、浮気したら殴って構わないし…どうしようも無くなったら逃げ出しても構わない」


「なんか随分条件が良いね…まぁ良いやありがとう」


◆◆◆

「連れて来たぞ」


「初めましてチワです!」


「セレス、この凄く可愛いお嬢さんが俺の相手…税金まで肩代わりして貰ったのに良いのか? 他の三人と違って俺はお前を傷つけてばかりだ…息子のゼクトも酷い事したんだろう」


「セクトールおじさん、貴方は小さい俺に優しくしてくれた、ゼクトと同じように扱ってくれた…そんなあんたは俺は好きだ、だが一つだけ許せない事がある、それは浮気癖だ…彼女は凄く可愛いよな、そしてきっと、あんたにも尽くしてくれる、ただ『嫉妬心が深く浮気は許さない』もし気に入ったなら、二人で人生を立て直して欲しい」


「ああっ、その位の方が俺には良い、もう浮気なんてしない、チワさん、俺は良い歳だし、財産も少ない…俺でも良いのか?」


「私は『愛』しか要らないから大丈夫だよ…浮気さえしなければそれで良いよ」


「俺はセクトール…宜しくな」


「はい」


浮気したら…大変だぞ、セクトール…頑張れ。


◆◆◆


俺は嫌ってないと言いながら、少し恨んでいたのかも知れない。


浮気が出来ない相手を選んだのだから…


静子さん達には『二度と浮気が出来ない』ようにした。


そう言えば良い。


それに外見だけなら3人よりチワの方が美少女だ。


これで大丈夫だよな。









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