第33話 【閑話】心の別れ メルの場合



どうして私は馬鹿な事しちゃったんだろう。


憧れのゼクトに好きだと言われて舞い上がっちゃったんだ。


本当に私は馬鹿だ…


きっと私がゼクトの側室になっても…私の所には来ない。


王女に貴族、マリアにリダ良くて5番目…そんな私の所にゼクトが来るのか…考えただけで解る。


恐らく名目だけの側室で来ない…


普通は三職は、かなりの確率で勇者の側室になる…


だけど…私はチビで童顔だから、ゼクトの好みじゃない。


だから、早々と、そこから外された。


村に居る時から、マリアやリダとは仲が良い。


私は違う…


任務以外では殆ど話してくれないゼクト。


そんなゼクトが、私を望んだから…頭が可笑しくなっていた。


私は賢者だから…本当は常に冷静に居なければならない。


そんな私が色恋に狂った。


『勇者の側室』その地位に目が眩んだ…


その結果、本当は大切な人を切り離した。


『アホか』


今の私なら解る。


私はセレスを男の子としては見ていない。


多分『兄』『お父さん』二つを合わせた、存在…それが近い。


手こそ上げないが家の父は良く暴言を吐き、私やお母さんを怒鳴る。


泣いている私を見つけるとセレスは何時も笑いながら、何かをくれた。


それはお芋だったり、焼き魚だったり、あるいわ綺麗な石だった。


「どうした? 俺には話を聞く事位しか出来ないけど…話す? 少しは楽になるよ」


馬鹿か…


5歳からこんな話子供がする?


しかも私だけじゃない…お母さんにもだ。


そんな事ばかりしていたから…頭から抜けちゃっていた。


誰よりも優しくて素敵な人だけど…恋愛から抜けちゃっていた。


馬鹿は私だ…


今のパーティで、私は孤立していた。


任務以外の会話には加わりにくい。


そういう時は何時も、外れて本を読むか、寝たふりをするしかない。


そんな私を見かねて話をしてくれたのはセレスだ。


何時も自分の事は話さないで、相槌を打ちながら聞いてくれた。


凄く優しい人だ…


優しすぎる人なんだよ…セレスは。


私がいつも寂しそうにしていたから…


ゼクトが側室にもしてくれない…私が泣いたから…セレスはネックレスを買ってきた。


『メルは可愛いからゼクトが駄目でも、他に良い人が見つかるよ…それでもね…心配なら売れ残ったら俺が貰ってやるから』


そう言ってくれた物だ。


しかも、見た感じ高級な物にしか見えない。


馬鹿で…優しすぎる。


私はゼクトに未練がある…だけど将来を心配していたから…


くれたんだ。


本当に馬鹿。


だって…こんな高価なネックレスを付き合いもしない女に渡すなんて…


『売れ残ったら』…それじゃ売れ残らなければ…セレスは只のあげ損じゃない。


だから…つい口からでちゃったわ。


『だったら…セレスが貰ってくれれば良いじゃない』ってね。


私が貰ってくれって言ったのよ?


そのままキスの一つもするか押し倒せば良いのよ!


だけどセレスは…


『本当に好きなら、嬉しいけど弱っている女につけ込みたくないから…返事はしないよ…』


だって…もうどうして良いか解らなかったわ。


その結果…私はセレスを傷つけた。


私は馬鹿だ…


もし、ゼクトを選ぶにしてもあれは無い…


自分に優しくしてくれた人にして良い事じゃない。


だからね…決めたの。


もし、セレスが私を欲しいというなら今度はしっかり男女の関係になる。


三人全員が良いなら…それも良い…


だけど、もし戻るのが嫌なら、引き止めないし、ゼクトを敵にしても自由にさせてあげるよ…


それが、悲しくて寂しがっていた私に貴方がくれた物だから。


セレス…今度は、貴方が自由に選ぶと良いよ…







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