第20話 三人


セレスくんを送り出した後、私は1人で挨拶に出掛けた。


とはいえ、少し前まで住んでいたので簡単な事情説明だけ…後はセクトールの話をする位。


お金があるのに近所に振舞わなかったから元から嫌われているし、裕福なのに私を売った事情をも話したから、もう終わりね。


もし鉱山から帰ってきても村八分どころか村十分、誰も相手にしない。


セクトールへの仕返しはこれで終わりで良いわ。


もし、私が不幸になっていたら、殺す位迄追い詰めたけど、今の私は幸せだから…もう充分よ。


◆◆◆


ミサキの家に集まって酒盛りを始めたわ。


サヨの家でも良いんだけど、あそこの旦那は横柄だから邪魔が入るからこちらにしたのよね。


ミサキの旦那は気を利かせて友人と遊びに出かけてくれたらしいわ。


「静子、お久しぶり」


「今回は大変だったね」


「ええっ、だけど、うふふふっ、その後が幸せだから、そんなに大変に思わないわ」


「凄いわね~あのセレスちゃんと再婚したんでしょう?羨ましいわ」


「自分の子供みたいな、セレスさんを誑かすなんてね、凄い事するよね」


セレスを『セレスちゃん』と呼んでいるのがミサキ。

マリアの母親で、黒紫色の長い髪で、胸が大きくお尻も大きいわ、眼鏡を掛けていて理知的に優しく見えるけど、キレたら…うふふっ性格が変わるわ、元は一緒のパーティに居て『黒の狂騎士』という字持ちなのよ、騎士のジョブ持ちで、普段は大人しく優しいんだけど、キレたら…『狂』がつくから解るよね。


セレスを『セレスさん』と呼んでいるのがサヨ。

メルの母親 茶髪長い髪の毛で切れ長の目をしているわ、胸とお尻が大きく右目の下に涙ほくろがあるのよ、真面目な性格をしているけどおっとりしていて、結構流されやすいのよ。同じパーティに一緒にいて字は『涙目の氷姫』。魔法使いのジョブ持ちで悲しそうな目と氷魔法が得意な事からついた字なの…本当に悲しんでいるんじゃなくてサヨっていつも薄幸そうに見えるのよね。


最も、二人とも猫を10匹以上被っているから誰も解らないけどね。


「静子、一人でブツブツ何話しているのかな?」


「うふふっ、只の独り言だよ、ミサキ」


「そうかな、それなら良いんだけど…セレスちゃんと静子がくっつくなんて、歳から言ったら信じられないよ」


「そうかしら? セレスさんの性格からしたら普通だよ、あの子昔から年上好きだったもん」


「サヨ~私だって、セレスちゃんが、大人の女性が好きそうだ…その位は解るよ、だけど私達は母親のミルナさんとほぼ同い年だよ…普通は…常識から考えて男女の関係にならないよ」


「そうかな? セレスさんは昔から紳士だったよ?私みたいなおばさんにも、焼き魚をくれたり、焼き芋をくれたり優しいわ…他の大人の男と比べても子供なのに優しかったと思うよ、流石に5歳と20歳じゃ付き合えないけど『ああっこの子私が好きなのね』その位は解っていたよ」


「だけど、それって…子供の恋心だよ『お母さん大好き』それと同じだよね」


「ミサキ…それは違うよ、セレスさんは多分、そんなんじゃ無くて、本気で好きになってくれていたよ、流石に歳の差を考えたら答えられなかったけど、だけど、ちゃんと真っすぐに好きになってくれているからこそ、私は思ったの、子供扱いしちゃ可哀そうだなって…だから私は『セレスさん』って1人の大人扱いしたのよ、他の子は呼びつけだけどね」


「そうか、だからサヨは昔から『セレスさん』って呼んでいたのね」


「そういう静子だってそうでしょう?『くん』なんて付けたのはセレスさんにだけだよね?」


「うふふっ、確かに特別な子だったわ…だけど私は男性とまでは思わなかったわ…気持ちは解かっていたけど、あの時は理想の息子に近かったわね」


「理想の子供なら私も同じだよ、感謝の言葉もくれない、可愛げの無いマリアより、ずうっと可愛いし、良く手伝ってくれていたもの」


「確かに子供としても良い子よね、セレスさんは…それで率直に聞くけど、夫婦の営みはどうなの?」


「サヨ…それは無いよ、私達おばさんだよ、あんな若い子が、こんな体になんて興味無いって」


「うふふふっ、信じられないかも知れないけどね…それが獣なのよ、朝まで離してくれないわ…本当に幸せだわ」


「「本当(ごくっ)」」


「こんな事で嘘ついてもしょうがないじゃない…」


「静子~私を騙そうとしていない? 幾らセレスさんでもそれは無いよ」


「そうだよ…セレスちゃんでも、それは無いな、私なんて旦那に『抱く価値が無い』そう言われているんだから」


「そうよ…セレスくんが静子の体に夢中?10年前なら兎も角、今は無理があるわ、うちもミサキと一緒でもう10年以上レスだし、手を繋ごうとしたら気持ち悪いって言うんだよ? 30過ぎのじじいですら抱こうと思わないんだから…15歳のピチピチしたセレスさんが、その気になるわけないよ」


普通は信じないわよね…若い美少年がおばさんに夢中なんて。


「それに、もしそうなら、普通はセレスちゃんを独り占めしたいから言わない筈よ」


「私は嘘はついていないわ、ただ『1人は4人の為に4人は1人の為に』あの約束があるから報告しただけよ…信じなくてもそれは構わないわ…私が蕩けるような生活を1人で送っていても報告はしたんだから、うふふっ文句言えないわよね?」


「サヨ本当みたいだよ」


「ミサキ、解っていたわよ…静子がわざわざ首筋のキスマークを見せてくるんだもん」


「それキスマークだったのね」


「それで何かしら? 静子自分が幸せだから自慢がしたいのかしら…私が不幸せだから馬鹿にしたいのかな」


うふふふっ、食いついてきたわ


「サヨ…静子は、そんな奴じゃないよ…そんな事したら私がキレるのを知っているから…」


「今日ね、セレスくんにはハルカの所に夜這いに行かせているのよ」


「夜這い?」


「本当に行かせているの? なんで? だけどあそこは円満じゃない?」


「貴方達も解るでしょう? カズマくんは優しいけど、多分女としてハルカを見ていないと思うのよ」


「それはそうかもね」


「だよね」


「でもセレスくんは本当に『私達を女と見てくれる』だから貴方達、旦那と別れてくれないかしら」


「それ本気? 別れたら…良いの?」


「別れたら…また女として愛して貰える、そんな期待をして良いの」


「ええっ私としては、別れてセレスの妻に一緒になって欲しいのよ…どう」


「冗談や嘘じゃないのよね…嘘だったら私…知らないよ、暴れるよ」


「セレスさんのお嫁さん…恥ずかしいけど楽しそう…さっきの話、嘘じゃないのよね、今更冗談じゃ済ませないわ」


「嘘は言わないわ…その代り、もし嘘じゃ無くて、本当だったら『冒険者に戻って手を貸してくれる』」


「「いいよ(わ)」」


「それじゃ嘘じゃない証拠を後で見せてあげるわ」


「本当に嘘じゃないんだよね」


「証拠なんて…なにを用意しているの…」


「うふふっ、今は内緒よ」


明け方になればね…うふふっ解るわ。


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