第50話 やっぱり言いたい事は言うべきです
「何よ、あんた。私に文句でも言いに来たの?」
ギロリと私を睨みつける。そもそも、前世から数えて40年以上生きている私が、こんな小娘に睨まれても怖くなんてない。
「はい、文句があって参りました。まず、リュカ様を騙した事を謝ってください。そのせいで、リュカ様はとても傷つき、悩んだので」
「どうして私が謝らないといけないのよ!」
「あら?フェリース王国では、悪い事をしても“ごめんなさい”も言えない国なのですね。我が国では、小さな子供でもごめんなさいを言えますわよ」
プププと笑ってやった。すると真っ赤な顔をして
「私だって謝れるわよ。リュカ殿下、あの…ごめんなさい…ほら、謝れたでしょう」
どうだ、すごいだろう!と言った顔をしている。でも、そんな蚊の鳴くような声で謝られても。それに全然心がこもっていない。
「あら?今のは謝罪でしたの?全く聞こえませんでしたわ」
「あなたどこに耳を付けているのよ!リュカ殿下、この度は申し訳ございませんでした!これで聞こえたでしょう」
鼻息荒く迫って来るマリーゴールド殿下。
「ええ、聞こえましたわ」
「聞こえたならいいのよ。これでイーブンね。とにかく私は、リュカ殿下と結婚するから。あなたはさっさと諦めなさい」
なぜか自信満々でまだそんなふざけた事を言っている。もう怒りを通り越して、笑いがこみ上げてくる。つい、声をあげて笑ってしまった。
「ちょっと!何が可笑しいのよ」
私が笑った事が気に入らなかったマリーゴールド殿下。真っ赤な顔をして抗議をしている。
「ごめんなさい。でも、あれだけリュカ様に拒絶されたにも関わらず、まだ諦めないだなんて、随分と精神がお強いのだと思いまして…私だったら、一度拒絶された時点で諦めてしまいますわ。だって、こんなにも嫌われているのに、それでも諦めないだなんて、よほどメンタルが強くないと耐えられないでしょう?」
本当はどれだけ図太いの!と言いたいが、そこはオブラートに包んだつもりだ。
「確かに、リュカ殿下からそこまで拒絶され続けて、それでもまだ諦めないだなんて、よほど精神がお強いのですわね。私ならジュリアとリュカ殿下の幸せそうな姿を見た時点で諦めますわ」
いつの間にか側まで来ていたマリアナが、クスクス笑いながらそう言った。さらに
「確かに隣国の王女だからって、ちょっと図々しいわよね…」
「それもリュカ殿下を陥れてまで手に入れようとするなんて…私ならそこまで出来ないわ…」
「リュカ殿下もいい迷惑よね。あんな王女に付きまとわれて」
周りからそんな声が飛ぶ。
「わ…私は別に…もうリュカ殿下なんて興味はありませんわ。ジュリア嬢と言ったわね。あなたに譲ってあげるわ。感謝しなさい!」
そう言い残すと、がに股でその場を去って行った。
やっと終わった。いつの間にか私の側に来ていたリュカ様が、ギュッと抱きしめてくれた。そんなリュカ様を見つめる。
でも次の瞬間、今度はなぜかゴーン王太子殿下がやって来た。
「妹になんて事を言うんだ。君は私と結婚して、フェリース王国の王妃になれたかもしれないのに。王妃になりたいだろう?今ならきっと、妹も許してくれるかもしれないよ。さあ、私と一緒に謝りに行こう。そうだ、嫁いでくるときは、醤油などの調味料も一緒に持ってきてほしい」
もう1人訳の分からない人がいた…
何をどうしたら、私がこの人と結婚すると言う話になるのかしら?
隣で怒りを爆発しそうなリュカ様の方を見つめ、ほほ笑んだ。そして再び、ゴーン王太子殿下の方を見る。
「ゴーン王太子殿下、私はリュカ様と正式に婚約をしております。どこでその様に私がゴーン王太子殿下と結婚すると言う話になったのかは知りませんが、訳の分からない事を言うのはお止めください。そもそも私は、あなた様が苦手です。醤油などの調味料が欲しいのでしょうが、差し上げる事は出来ません。ただ、今後輸出も検討しておりますので、どうか正規ルートで購入してくださいね」
そう言ってにっこり微笑んでやった。
「な…なんて失礼な令嬢だ。私は王太子だぞ!こんな失礼な令嬢だとは思わなかった。そういえば君、以前変り者令嬢と呼ばれていた様だね。本当に変り者だ!」
「ゴーン王太子殿下、ジュリアの悪口はお止めください。ジュリアは、僕の大切な婚約者です。今回の暴言も、正式に抗議させてもらいますからね」
隣でリュカ様が怒ってくれた。
「ありがとうございます、リュカ様。でも、私は確かに変り者令嬢で合っていますので。ゴーン王太子殿下、私は変り者で失礼な令嬢です。どうか私の事は、諦めて下さい」
ぺこりと頭を下げた。
「言われなくても、こっちから願い下げだ」
そう叫ぶと、マリーゴールド殿下と同じように、がに股で去って行った。
「なにあれ!兄妹そろってカッコ悪…」
ゴーン王太子殿下が去った後、誰かがポツリと呟いた。その瞬間、なぜか笑い声が巻き起こる。さらに
「ジュリア嬢、最高!さすがリュカ殿下が選んだ令嬢だ」
「さすが変り者令嬢、やる事が違うね」
次々と私を褒める?コメントが飛ぶ。
「リュカ様、私はやっぱり変り者令嬢の様です。こんな私で本当によろしいのですか?」
側にいたリュカ様に、そっと問いかけた。
「ああ、もちろんだ。僕にはジュリアしかいない。それに今日の君は、とてもカッコよかったよ」
そう言ってほほ笑んでくれた。やっぱりお腹にためておくのは良くないわね。言いたい事ははっきり言わないと。今回の出来事で、強くそう思ったのであった。
~あとがき~
次回最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
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