第49話 真実が明らかになりました

「待って下さい、兄上。僕がジュリアにまずあの日、何があったのか説明させて下さい。なぜ僕が、マリーゴールド殿下を抱きしめてしまったのかを…」


そう言うと、私の方を向き直したリュカ殿下。



~5日前・リュカ視点~

「兄上に一体何があったんだ?」


僕は急いで男子生徒に付いて行く。でも、なぜかあちこち動き回っているだけで、いつまでたっても兄上の元にたどり着かない。もしかして、ゴーン王太子殿下に嵌められたのか?


しまった!


「君、ゴーン王太子殿下に頼まれて、僕を連れ出したんだね。悪いが僕は、急いでいるから」


急いでいたとはいえ、ゴーン王太子殿下とジュリアを2人きりにしてしまうなんて…今ジュリアはどこにいるのだろう?


急いでジュリアの居場所を確認するため、機械を取り出した。いつでもジュリアの居場所がわかる様、ユニコーンが落とした玉に、居場所を特定できる機器を取り付けてあるのだ。


その時だった。


目の前には、笑顔を浮かべたジュリアの姿が。


「ジュリア、僕を心配して迎えに来てくれたのだね」


嬉しくて、ついジュリアを抱きしめた。いや…違う、この女はジュリアじゃない…


彼女を抱きしめた瞬間、ジュリアではないとわかり、慌てて離れた。


「君は誰だ!なぜジュリアと同じ顔をしているんだ!」


「あら、抱きしめただけで、本人じゃないと気が付くなんてさすがね」


この声は…


「マリーゴールド殿下…でも、どうしてジュリアの顔をしているのですか?」


「これ、すごいでしょう。我が国では、特殊なマスクでなりたい人の顔になる事も出来るの」


そう言うと、顔を剥がしたのだ。なんて事だ…こんなものに騙されしまっただなんて…


「ねえ、リュカ殿下。さっき私を抱きしめた映像をばっちり録画してあるの。もちろん、画像もね。これをジュリア嬢に見せたら、どんな反応を示すかしら?」


ニヤリと笑ったマリーゴールド殿下。もしかして、僕を脅しているつもりか。


「僕にどうしろと言うんですか!」


「そうね、まずは口づけをして」


「口づけだと!ふざけないでください。そんな事は出来ません」


「あら…それなら、この映像をジュリア嬢に見せるまでね」


クソ、何て性格の悪い女なんだ。でも、これ以上僕はジュリアを裏切りたくはない。


「とにかく、そんな事は出来ません。そもそも、こんな事をしてただで済むと思っているのですか?」


「あら?あなたの証言以外、証拠はないわよ。でもこっちには映像と画像が残っているの。1回くらい、いいでしょう?」


じわじわと迫って来るマリーゴールド殿下。


「止めてくれ、僕に近づくな…」


その時だった。


「リュカに何をしているんだ!」


「兄上!」


なぜか兄上が僕たちのところにやってきてくれたのだ。


「あら、残念ね…」


そう言って、マリーゴールド殿下は去って行ったのだった。




♢♢♢

「いくら特殊な加工を施されていたとしても、僕は君と間違えてマリーゴールド殿下を抱きしめてしまった。本当にすまない…」


そう言って、私に頭を下げるリュカ様。そんなリュカ様を、ギュッと抱きしめた。


「特殊なマスクを使っていたのなら、仕方がないですわ。それにすぐに私ではないと気が付いて下さったのでしょう?その上、マリーゴールド殿下の脅迫にも屈しなかったではないですか。それだけで、十分私は嬉しいですわ」


もし銀色の髪に金色の瞳をした男性がこちらをほほ笑んでいたら、私もきっとリュカ様だと思うだろう。もしそのまま抱きしめられたら、私、別人だと気が付けるかしら…


「ジュリア、ありがとう。もう二度と君と別の女性を間違えたりしないから!」


そう言って強く抱きしめてくれた。


「リュカ、ジュリア嬢もそれくらいでいいだろう。マリーゴールド殿下、我が国の第二王子を陥れ、脅迫までするなんて!」


リューゴ王太子殿下が近くにいたマリーゴールド殿下に向かって叫んだ。


「リューゴ王太子殿下。あなた様が弟を信じたいのはわかりますわ。でも、それはただの言いがかりです。私がリュカ殿下を陥れたと言う証拠はあるのですか?」


「その件だが、殿下が雇っていた人間は、我が国の貴族ですよね。彼らには“成功したらフェリース王国の公爵にしてやる”と言った様ですね。本当に、こんな誘惑に引っかかる貴族どももバカだが、こんな事件を引き起こしたあなたは、本当にろくでもない人間だ!彼らから、証言はとっていますよ。さらに1人の貴族が、当時の様子を録画していました。ぜひご覧ください」


リューゴ王太子殿下が流した動画には、確かにリュカ殿下の証言通りの映像が流れていた。やっぱりリュカ殿下は嘘など言っていなかった。それにしても、マリーゴールド殿下、許せないわ!


「これで分かったでしょう。今回の件は、さすがに容認できません。既にフェリース王国の陛下と王妃様にも報告する様、使いを出しています。近々、お迎えが来るでしょう」


「嫌よ、やっと私の理想の王子様を見つけたのよ!絶対に帰らないわ。リュカ殿下と結婚するまでは!」


そう叫んでいるマリーゴールド殿下。今更何を言っているの?この人は!散々リュカ様を苦しめたくせに!体中から今まで感じた事のない怒りがこみ上げてくる。


「マリーゴールド殿下、何度も申し上げている様に、僕は…」


「リュカ様、お待ちください」


リュカ様を止め、マリーゴールド殿下の近くまでやって来た。

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