第23話 再び王宮に向かいます
「あなた、それは本当なの?ジュリアと言う別の令嬢ではなくって?」
お母様も信じられない様で、聞き返している。
「正真正銘、家のジュリアだそうだ…」
「あの…お父様、いくら何でも、私には第二王子の婚約者は務まらないかと…」
「私もそう思う。リュカ殿下は非常に優秀で、いずれ家臣に降りるとはいえ、公爵家の爵位と広大な領地を与えられると聞いている。もちろん、兄上でもある王太子殿下の右腕として期待されているだろう。そんな方とジュリアが婚約だなんて…」
「確かにジャスミンならともかく、ジュリアでは務まらないわ。あなた、お断りは難しそうなの?」
「私も“ジュリアではとても務まりません”と陛下に伝えたのだが…ただ、王族からの申し出を無下にする事も出来ないんだ…それで、午後からジュリアを連れて、王宮に向かう事になっている」
えっ、またドレスを着て王宮に行くの?物凄く疲れるじゃない。
「ジュリア、そんな嫌そうな顔をするな。もしお前がリュカ殿下と婚約したら、頻繁に王宮に足を運ぶことになるんだぞ。とにかく、そんなだらしない格好を好むお前には無理だ。なんとか諦めてもらう方向に持って行こう」
「そうね…本当にこんな格好をしている令嬢なんて、聞いたことがないもの…とにかく、ジュリアでは務まらないわ…」
私のジャージ姿を見て、ため息をつく2人。ちょっと2人とも、確かに令嬢らしくはないけれど、そこまで言わなくてもいいじゃない!本当に、失礼しちゃうわ。
「とにかく、今からすぐに昼食を食べて、王宮に向かう支度をしよう。あまり食欲はないが、食べない訳にもいかないからな」
そう言うと、お父様は立ち上がり、部屋から出て行った。どうやら本当に第二王子から婚約の申し込みがあった様だ。
でも、どうして私なのかしら?もしかしたら、何か理由があるのかもしれない。とにかくものすごく気が重いが、王宮に行かないといけないのよね。
仕方ない…準備をするか…
急いで食事を済ませ、ドレスに着替える。そして髪の毛もハーフアップにしてもらった。
「お嬢様、せっかくなので、エメラルドのイヤリングとネックレスも付けましょう」
そう言って嬉しそうに私を着飾るファリサ。
「別にそんなに着飾らなくてもいいのよ…」
そう伝えたのだが
「何をおっしゃっているのですか?旦那様や奥様はああいっておられましたが、私はリュカ殿下との婚約は大賛成です。それにしてもリュカ殿下は、本当に見る目がおありですわ。お嬢様は少し変わっておられますが、それでも魅力的な令嬢ですので」
「…ありがとう…ファリサ」
少し変わっていると言うのが気になったが、そこはスルーしておこう。
着替えが終わると、重い足取りで玄関へと向かう。そこにはなぜかお兄様とお姉様もいた。
「ジュリア、父上に聞いたぞ。お前、リュカ殿下から婚約の申し出があったんだってな。確かに殿下はお前と出会ってから、随分と変わられた。薄々は感じていたんだ、お前に好意を抱いていらっしゃるという事は」
「そうよね。あんなに令嬢に興味がなかったリュカ殿下が、ジュリアにだけはちょっかいを出していらしたものね。いずれ王家から申し出があるだろうとは思っていたけれど、まさかこんなに早く来るとはね」
何ですと!お兄様もお姉様も、こうなる事を予期していたの?それも、第二王子が私に好意を抱いているですって?にわかに信じがたいわ…
「お前たち、それは本当なのか?それなら、なぜ私に言わなかったんだ?」
隣でお父様がお兄様たちに詰め寄っている。
「言ったところで、どうしようも出来ないでしょう。とにかく、王族から正式に申し出があったのなら、どうせ断る事なんて出来ないだろうし」
「確かにリュカ殿下がその気なら、断る事は厳しいかもしれないな…」
ボソリとそう呟いたお父様。ちょっと、諦めないでよ。そもそも、私には第二王子の婚約者なんて、とても務まらないわ!
「とにかく、早く行かないと。王族を待たせる訳にはいきません」
「そうだな、それじゃあ行こう」
お兄様に促され、両親と私の3人で馬車に乗り込んだ。
「ジュリア、あなたはとても魅力的な女性よ。あなたならきっと大丈夫よ。頑張ってね」
お姉様が声を掛けてくれる。でも…私のどこに魅力があって、どのへんが大丈夫なのかしら…
ゆっくり動き出す馬車。とにかく、なんとかお断りをしないと!でも、うまく断れるかしら。ダメだわ、緊張してきた。
お父様もお母様も落ち着かないのか、あっちを見たりこっちを見たりしている。こんなに動揺している両親は初めて見たわ。
そして馬車は、あっという間に王宮に着いてしまった。
「さあ、行こうか」
お父様とお母様と一緒に馬車を降りると、そのまま王宮内に案内された。そして、これまた立派な扉の前までやって来た。
使用人が先に部屋に入って行く。そして
「どうぞこちらへ」
部屋に案内された。いよいよだ!
お父様とお母様と一緒に、ゆっくりと部屋の中に入ったのであった。
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