第18話 彼女と仲良くなりたい~リュカ視点~

ホールに着くと、すました顔で座っているジュリア嬢が目に入った。ああやって普通に座っていれば、結構綺麗な令嬢だ。つい彼女の方ばかり目で追ってしまう。


そしていよいよ式が始まった。学院長先生のお話しが始まった。長くて退屈だな…ふと、ジュリア嬢を見ると、何を思ったのは、今にも吹き出しそうな顔をしている。一体何がそんなに面白いのだろう。やっぱり、変わった子だな。


その後、兄上が登場した。特に令嬢から、黄色い声だ飛ぶ。ふとジュリア嬢を見ると、全く興味がない様で、あくびまでしている。その姿がまたおかしくて、笑いがこみ上げて来た。


そしていよいよ新入生代表でもある、僕の挨拶だ。僕が第二王子だと知って、ジュリア嬢はどんな顔をするかな?そう思うと、ワクワクしてきた。


早速壇上に上がり、挨拶をする。チラリとジュリア嬢を見ると、目玉が飛び出るのではないかと言うくらいびっくりしている。口までポカンと開けているし。よほど驚いたのだろう。ダメだ、可笑しくて笑いそうだ。


僕は必死に笑いを堪え、挨拶を終えた。


式も終わり、各自クラスに向かう。もちろん僕はAクラス。今年は侯爵以上が多いためか、Aクラスのほとんどが侯爵以上だ。もちろん、ジュリアナ嬢も一緒。早くジュリアナ嬢、来ないかな。そう思っていたのだが、待てど暮らせど来ない。その間も、煩わしい令嬢たちが僕の周りを囲む。


もしかして迷子になったのか?いや、さすがにそれはないだろう。でも、ホールに行くだけでも迷子になる令嬢だぞ。


僕の予想は見事に的中。結局ジュリア嬢は、先生が来てからやって来たのだ。先生から怒られるジュリア嬢を、庇ったのだが…なぜかプイっと目をそらされてしまった。


僕が第二王子だとわかっても、そんな態度をとる令嬢がいるなんて。増々彼女に興味を抱く。


もっと彼女と話したい、そう思い先生の話しが終わった後、彼女に近づこうとしたのだが…


「リュカ殿下~」


一瞬にして令嬢たちに囲まれてしまった。その上


「スリーティス嬢のあの態度、見ましたか?せっかくリュカ殿下が助けて下さったのに、お礼も言わないなんて」


「本当に感じが悪いわよね」


「まあ、変り者令嬢と言われているくらいですもの。私たちも極力関わらない様にしましょう」


なんて、次々と悪口を言っている。何なんだこの令嬢たち。彼女を悪く言うな!なぜかジュリア嬢に対する悪口を聞いた僕は、無性に腹ただしくなった。でも…令嬢たちに文句を言う事が出来ない情けない僕…


結局僕が令嬢たちに捕まっている間に、彼女の兄と姉が迎えに来て連れて行ってしまった。


王宮に戻ってからも、考える事はジュリア嬢の事ばかり。あの子、僕の顔を見ても何にも反応しなかったな…それどころか、文句まで言って。本当に、不思議な子だ…


翌日、早速ジュリア嬢に声を掛ける。昨日とは打って変わって、僕に丁寧にお礼を言ったジュリア嬢。もっと色々と話しがしたかったのだが、結局令嬢たちに邪魔された。


本当にこの令嬢たち、しつこいな。結局この日も彼女とはほとんど話が出来なかった。その翌日も、さらに翌日も、ジュリア嬢に近づくことが出来ない。


どうやらジュリア嬢は、クラスに馴染めていない様で、ずっと1人で寂しそうにしている。それなら僕が!そう思い、令嬢たちの隙を見ては話しかけているのだが、なぜか毎回令嬢たちに邪魔されるのだ。


さらに


「殿下がお優しいのはわかりますが、あんな変り者にまで優しくする必要はありませんわ」


「そうですよ、殿下。あんな令嬢、無視しておけばいいんです」


と、最低な事を言ってくる。お前たちなんかより、ジュリア嬢の方がずっと魅力的だ。そもそも、図々しくずっと僕の側にいるのは、お前たちの方だ!そう言いたいが、小心者の僕は、そんな事を言えない。


本当に、僕はどうしてこんなに情けないんだ…自分が心底嫌になる…


そんなある日、ジュリア嬢が嬉しそうにお菓子を進めて来たのだ。おせんべいと言うお菓子らしく、見た目は…あまりよくはない。それでもジュリア嬢が一生懸命作ったお菓子なら、食べてみたい。そう思っていると、皆に配り始めた。でも…1人の令嬢が返したのを筆頭に、皆がおせんべいを返してしまった。


悲しそうな顔をしているジュリア嬢。すぐに僕は、おせんべいを1つくれる様、ジュリア嬢に頼んだ。でも、図々しい令嬢が、それを阻止する。それもひどい暴言までジュリア嬢に吐き捨てたのだ。


さすがの僕も怒りがこみ上げて、一言令嬢に文句を言ってやろうと思った時だった。


マリアナ嬢がやって来たのだ。そんなマリアナ嬢、ジュリア嬢の作ったおせんべいを1つ欲しいと言い出したのだ。


もちろん、令嬢たちがそれを止めようとした。そんな令嬢たちを、なんとマリアナ嬢は厳しくしかりつけ、さらにおせんべいを食べたのだ。その上かなり美味しかったのか、全てマリアナ嬢がおせんべいを引き取る事になった。


その瞬間、嬉しそうに笑ったジュリア嬢。その笑顔の可愛いのなんのって…。それにしてもマリアナ嬢、普段は大人しそうなのに、言いたい事は言うタイプなんだな。


僕もマリアナ嬢みたいに、言いたい事が言えたら…そしたら、ジュリア嬢を守れるのかな…そんな事を考えてしまう。


とにかく、僕も少しずつ変わらないと。彼女の為にも、自分の為にも…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る