第14話 王妃様が助けてくれました
「単刀直入に言わせてもらおう。君の様な変り者とマリアナをこれ以上一緒にいさせたくはない。悪いが、マリアナにはこれ以上近づかないでもらえるか?」
やっぱりそう来たか。予想通りの自己中っぷりに、さすがに頭に来た。こうなったら、言いたい事を言ってやろうじゃない!
「お言葉ですが王太子殿下。私とマリアナは、既に親友と言っても過言ではない程、親しくさせていただいております。第一、この件に関して、マリアナは知っているのですか?」
「知る訳がないだろう?だから君の方から、マリアナを突き放して欲しいと頭を下げてお願いしているのではないか?」
頭を下げている?一度も頭が下がっているところなんて、見ていない。そもそも、さっきから物凄く上から目線なのだけれど…
突っ込みたい事は山ほどあるが、ここは冷静に対応しないと。
「たとえ私からマリアナとの距離を取ったとしても、マリアナは納得しないと思いますわ。そもそも、いくら婚約者とはいえ、令嬢同士の仲に口をはさむのはいかがなものかと」
「なんだと!僕は王太子だぞ。よくも僕に向かって!」
顔を真っ赤にして怒り出した王太子殿下。しまった、つい興奮して言い過ぎてしまったわ。
「あの…申し訳ございません。つい言いすぎました」
慌てて謝罪した。
「ジュリア嬢が謝る必要は無いわ。リューゴ、いくら何でも、さすがにそれは言いがかりよ。それに、あなたがやっている事は権力の乱用に当たるわよ」
「母上…なぜここに?」
母上?声方を振り向くと、豪華なドレスに身を包んだ女性が立っていた。王太子殿下が母上と呼んだという事は…
「お初にお目にかかります、王妃様。ジュリア・スリーティスと申します」
急いで立ち上がり、王妃様に挨拶をした。
「ご丁寧にありがとう。ごめんなさいね。この子、マリアナちゃんの事になると、我を忘れるみたいで…」
困り顔の王妃様。
「どうして母上がここにいるのですか?」
再び王太子殿下が王妃様に聞いている。確かに、どうしてここにいらっしゃるのかしら?
「あなたがマリアナちゃん以外の令嬢を呼び出したと聞いて、心配で見に来たのよ。実はマリアナちゃんから、もしかしたらリューゴがジュリア嬢を呼び出して、文句を言うかもしれないから、その時は助けてあげてほしいと言われていてね。さすがにそんな事はしないと思っていたのだけれど…」
あきれ顔の王妃様。さすがマリアナね。まさか王妃様に私の事を頼んでおいてくれるだなんて。
「とにかく、みっともない事は止めなさい!ジュリア嬢、本当にリューゴがごめんなさい。これからも、マリアナちゃんと仲良くしてあげてね」
そう言って頭を下げた王妃様。
「せっかくだから、あなたとも話がしたいわ。リューゴ、もうあなたは席を外しなさい!二度とジュリア嬢に、言いがかりをつけてはいけないわよ!わかったわね」
「…はい…申し訳ありませんでした…」
ものすごく不満そうな王太子殿下。
「謝るのは私ではないでしょう。ジュリア嬢にきちんと謝りなさい!」
「すまなかった…」
王妃様に言われ、蚊の鳴くような声で謝る王太子殿下。まさか王太子殿下から謝罪を受けるなんて思わなかったわ。
「私は気にしておりませんので」
そう伝えておいた。そして、王太子殿下はそのまま部屋から出ていった。でも部屋を出る寸前、私をギロリと睨んだのを見逃さなかった。本当に、あの男は…
「ジュリア嬢、本当にリューゴがごめんなさい。もしまたあの子に変な事を言われたら、いつでも言ってね」
「ありがとうございます。王妃様」
どうやら王妃様は、とてもお優しい方の様だ。
「そうそう、私ね。ずっとあなたに会いたかったの。先日マリアナちゃんから、おせんべいと言うお菓子をおすそ分けしてもらったの。そのおせんべいが、とっても美味しくてね。聞けばジュリア嬢、あなたが作ったっていうじゃない。他にも、色々と変わったお料理を作っていると聞いて。ねえ、今度私にも食べさせてくれないかしら?」
「私が作ったお料理をですか?」
「ええ、そうよ!ね、お願い。あのおせんべいの味がどうしても忘れられなくて…」
「分かりましたわ。私が作ったお料理でよろしければ、今度作って参ります」
「本当?嬉しいわ。ありがとう、ジュリア嬢。そうだわ、もしよかったら、今から作ってくれないかしら?」
「今からですか?でも、材料が侯爵家にしかなくて…」
「そう…それは残念ね」
心底残念そうな顔をする王妃様。王妃様にはたった今、王太子殿下から助けてもらった恩もある。よし!
「王妃様、もしよろしければ、一度侯爵家に材料を取りに帰ってもよろしいでしょうか?それから、私のお手伝いをしてくれている料理人も連れてきたいのですが」
「まあ、作ってくれるの?嬉しいわ。もちろん、構わないわよ。ありがとう、ジュリア嬢…いいえ、ジュリアちゃんと呼ばせてもらうわね」
ものすごく嬉しそうな王妃様。
早速馬車に乗り込み、一旦家に帰って荷物を取りに行く事にしたのだった。
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