第11話 マリアナ様と友達になりました

私の向かいに座ったマリアナ様。すかさず私のお弁当を見つけた。


「まあ、これはおにぎり。こっちは唐揚げだわ。卵焼きもある」


なぜか目を輝かせて私のお弁当を見つめるマリアナ様。それにしても、どうしてお料理の名前を知っているのかしら?もしかして…


「あの、マリアナ様。もしかして、“日本と言う国”を知っているのですか?」


意を決して聞いてみた。すると…


「やっぱり、ジュリア様も日本を知っているのね。実は私、前世の記憶があって。前世では日本人だったの」


「まあ、マリアナ様もですか!私も前世は日本人だったのです。それで、ずっと日本料理が恋しくて…お父様に頼んで、料理人と一緒に日本食を作っていたのです。他にも、ジャージも作りましたわ。そのせいで、変り者令嬢と言う名が付きましたが…」


「それで今日、おせんべいを作って来たのね。まさか今回の生で、おせんべいを食べられるなんて思わなかったわ。ねえ、そのお弁当、私にも少しわけてくれないかしら?ずっと日本食が恋しかったの」


「もちろんですわ。どうぞ」


早速お弁当をマリアナ様に差し出した。


「美味しいわ…なんて美味しいのかしら。こんなに美味しい食事、今回の生で初めてだわ」


それはそれは嬉しそうに頬張るマリアナ様。その後、マリアナ様と前世の記憶などを話した。どうやらマリアナ様は、20歳の時、交通事故で命を落としたそうだ。


そして次に気が付いた時は、公爵令嬢だったとの事。ただ公爵令嬢として生活していくうちに、段々と前世の記憶も薄れていき、このまま公爵令嬢として生きていこうと思っていたらしい。


「まさか私と同じ前世の記憶を持った人間がいるなんて。それにしてもジュリア様はすごいわ。ここまで日本食を再現してしまうなんて」


「私はとにかく、日本の料理が大好きでしたので。このまま日本料理が食べられないなんて、耐えられなかったのです。それにしてもこの国の人たち、皆アニメ顔だと思いませんか?私、皆同じ様な顔に見えてしまって…」


私の悩みの1つでもある、皆同じ顔に見えると言う悩みを、マリアナ様に打ち明けた。


「確かに、最初自分の顔を見た時、私もびっくりしたわ。でもアニメ顔って、あなた、面白い事を言うのね。私はある程度この国の人の顔は、認識できるようになってきたわ」


「そうなのですか!私は未だに皆同じ顔に見えるんです。アニメとかだと、大体メインキャラクターしか出てこないから、見分けがつくじゃないですか!でもこの国には、何十万もの人が暮らしているのです。それなのに、皆同じ様な顔をしているので、中々見わけがつかなくて…」


本当に、人の見わけがあまり付かないのだ。


「なるほど。ジュリア様は、日本人の時の記憶が強く残っているのね。でも、皆同じ顔だなんて。それでリュカ殿下を見ても、頬を赤らめないのね」


そう言ってクスクス笑っている。そういえば、第二王子はこの国一の美少年と言われているのよね。


「私、美人とかイケメンとか、あまりよくわからなくて…」


「アハハハハ。ジュリア様のそういうところ、好きよ。そもそも、顔がいいからって群がる令嬢って、ちょっとどうかと思うのよね。それにしても、この唐揚げ美味しいわね。みそ汁もたまらないわ」


なんだかんだ言いながら、私のお弁当を食べ続けているマリアナ様。


「気に入って頂けて嬉しいです」


「ねえ、ジュリア様、同じ日本人の時の記憶があるものとして、これからも仲良くしていただけるかしら?私、こうやって本心を語り合えるお友達っていなくて。あなたとなら、きっと素敵な友達になれるような気がするの」


真剣な表情でそう言ったマリアナ様。


「あの、私の様な変り者令嬢と、本当にお友達になってくださるのですか?」


どうしても信じられなくて、つい聞き返してしまった。


「あなたのどこが変り者なの?こんなにも美味しいお料理を作っているのに。もしあなたの事をバカにする人がいたら、私が懲らしめてあげる!だってあなたは、私の大切な友達ですもの」


大切な友達…

私の友達…

その言葉が、私の中にあったモヤモヤを、ゆっくりと晴らしてくれる。ジュリアとして産まれてから、友達と呼べる人がいなかった。でも今は…


「ありがとうございます。マリアナ様。そうだわ、明日も日本食を作って参りますわ。また食べていただけますか?」


「本当?嬉しいわ。ありがとう。それから、私たちはもう友達なのよ。私の事は、マリアナと呼んで頂戴。私もあなたの事を、ジュリアと呼んでいいかしら?もちろん、敬語もなしよ」


「もちろんです!」


「もう、ジュリアったら、敬語はなしって言ったでしょう」


そう言って笑ったマリアナ。初めて出来た友達。彼女となら、きっといい関係を築ける、そんな気がした。


その後も時間が許す限り、マリアナとお茶をしながら、話しに花を咲かせたのであった。

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