第2話 神の亀裂

会場にはしばらく静寂が流れた。

静寂の中で、ウラノスはついに口を開いた。

「私がこの世界を創造したのもずいぶん前のことだね。

私はこの世界が生まれた日からずっと一緒にいたよ」

彼は昔のことを回想でもするようにゆっくりと語った。

「そのとおりです、父上。 これからも永遠に一緒にいます」

ヘリウスはウラノスの意見に同意して言った。

「それでは本論に移ろうか。

あまり話してくれないとお前たちも嫌だろうから」

9神ともに緊張して耳を傾けた。

「短く言うよ。 君たちがこれから世界を導いてほしい」



ウラノスの衝撃的な発言に9神とも驚き、何も言えなかった。

会場の雰囲気はまるで誰もいないかのように静かな静寂だけが流れた。

「えーと。とくにみんな何も言わないのね。

なら同意したと思うよ」

ウラノスは急いで済ませようとすると、ヘリウスは急いで言った。

「父上、何をおっしゃるんですか。

この世界は父上のもの、誰も後を継ぐことはできません」

ヘリウスの言葉にウラノスは予想したようにすぐさま受け答えた。

「君たちがみんな力を合わせれば、出来ないことはない」

「父上、それでは本当の理由でもおっしゃってください。

平和な世の中だからやめるというのは、どう考えてもおかしいですよ」

ヘリウスの言葉にウラノスはかすかに驚いた。



ウラノスは少しためらったが、結局言うことにした。

「やっぱりヘリウスの目はごまかせないな」

ウラノスが笑いながら言った。

「それでは本当の理由を言ってくれなければならない。

あなたたちは何年前に一つ子が神界にいたのを覚えているか?」

「もちろん覚えています」

ヘリウスはウラノスの質問に答えた。

「その時、私はその子を純粋神という地位を与えたの。

でも、あの子はある日突然、理由もなく消えた。

私はその子を見つけたい。

君たちは僕が全知全能の神だと思うだろうけど世の中にはまだ僕の知らないことが多い。

そして私はその子を通じて私の知らない何かに向かうことができると思う。

それで、私はその子を探しながら、世界の全ての真理について探求したい。

それに今は平和な時期だから、今が一番いい時だと思うようになったんだ。

理由になったのだろうか?」

答えを聞いてヘリウスを含む9神は悩みに陥った。

いくらウラノスの本当の理由が分かったとしても、彼ら同士で世の中を導いていくのは不可能に見えたからだ。

「父上、それでもまだ自分たちで世の中を率いるにはあまりにも足りないんです」

ヘリウスはウラノスに懇願して言った。



「ヘリウス、私が初めてあなたたちを作る時、私は世界を導くために必須だと思われる要素を中心に作った。

そして僕がいない時に備えてヘリウス、 お前が一番中心になるようにしたんだ。

君を含む皆は僕の力を受け継いだ子供たちだ。

できない理由は全くない」

ウラノスはヘリウスを見つめながら言った

「私は皆が私の意図を理解したと思う。

今の私の消えることは永遠なことではない。

いつかまた会うことになるよ。

私はあなたたちを信じている」

ウラノスは急いで話を終えた。

9神はウラノスを止めようとしたが阻止する暇もなく、ウラノスは自分が言うべきことを言った。

そして、話が終わると同時に創造神ウラノスは姿を消して会議はあっけなく終わった。



「あり得ない…」

すべての神々は絶望し始めた。

「ヘリウス、父上がどこに行ったか知ってるよね。

父上はいつもお前のことを一番信用していた」

ベテルゲウスは起き上がってヘリウスに怒って言った。

「おれも知らないんだ。 今になってその子をどうして探すというのか。

その子は私たちが世界中を調査したのに、見つけられなかった存在じゃないの」

ヘリウスももどかしい気持ちで、これからどうすればいいか悩んでいた。

「それではまずは私たちも解散してヘリウス、みんな日程を合わせてもう一度会議を開こう。

そして、天使派遣隊を送ってお父さんを追跡させよう」

皆が当惑すると、知恵神シリウスが意見を出した。

「父上の気配が感じられないから、たぶん見つからないだろう」

ヘリウスは絶望して話した。

「それじゃ、父上は本当に消滅してしまったの?」

イザールが涙を流して言った。

「それはないと思うよ。

父上もいつか帰ってくるって言ってたから。

それでは私が日程を決めるから、そのときまた皆で会おう」

ヘリウスは馬と共に重い足取りで歩いた。

そして彼の行く後ろ姿をベテルゲウスは不満そうに見ていた。

「ヘリウスはこんな状況でも『次に』という言葉が出るのか」

ベテルゲウスは小さくつぶやいた。



ヘリウスは重い足取りで邸内に入ってきた。

「ご主人様、いらっしゃいましたか?」

執事は顔色の悪いヘリウスを見て心配そうに見ながら話した。

「うん、来た」

「ヘリウス様大丈夫ですか?

ウラノスさんが何か深刻な話をされたんですか?」

執事が心配そうな様子を見せるとヘリウスは努めて笑いながら話した.

「大丈夫だよ。

とりあえず僕は上がるよ。 少し疲れて」

「はい、それではゆっくり休んでください」

執事はヘリウスを捕まえてもっと話をしたかったが、状況がよくないことを知って、重く階段を上がるヘリウスを気の毒に眺めるしかなかった。



ヘリウスはドアを開けて部屋に入った。

「はぁ…」

ヘリウスは多くのことを思い浮かべた。

きっとうまくいくと言っていたが、ヘリウスも何をどうしたらいいのか全く見当がつかなかった。

「私はあまりにも何もしていないのかな?」

彼は後悔して言った。



ヘリウスは生まれた時からこんなに楽天的な神ではなかった。

もともとは、真面目さに満ちた神様だった。

ヘリウスは9神の長男でありウラノスから最も多くの力を受け継いだ神だった。

それでヘリウスはこの力の意味が自分がウラノスに最も役に立つようにという意味であると考え、どの神々よりも熱心に世の中のために働いた。

そんな ある日、ウラノスはヘリウスを呼んで「少しは気楽に暮らしてもいい」と話した。

初めは動揺したが、ヘリウスは徐々に長男と力の責任から逃れ、今のような楽天的な神になった。



「それでも私には心強い家族がいるから…」

ヘリウスは窓の外の美しい星や天の川を眺めながら小さく言った。

「神界も下界も父上がいなくても必ず守り抜く」

ヘリウスは大声でわめき散らしながら心に刻んだ。

しかし、ウラノスが消えたこの時点がヘリウスを含む世界の大転換点になるということを当時は気づかなかった。



みんなが眠り、闇だけが残った深い夜。

場所はベテルゲウスの豪邸だった。

ベテルゲウスの豪邸で最も深い地下にある秘密会議場には、ベテルゲウスを含むデネボラ、シリウス、カノープス、アクトゥルスが集まっていた。

「今がチャンスかもしれない」

デネボラが言った。

「わたしが考えてもそうだよ。

父上のいない今がチャンスだ」

カノープスは彼の意見に同意して言った。

「それでも今のような混乱の時期は早くないか?」

シリウスが心配して言った。

「しかし今の時期を逃せば彼の影響力がもっと大きくなる可能性もある」

デネボラは反論して言った。

「そうかな? ベテルゲウスはどう?

お前が、僕たちのリーダーじゃん」



シリウスがベテルゲウスを眺めると、黙って聞いていたベテルゲウスが口を開いた。

「今すぐは早いかもしれないが、今から準備するのは肯定的に考えられる。

多分機会はすぐ来るよ」

「そうだね。すぐに準備を始めて、 近いうちに開かれる会議でやったらどうだい?」

デネボラは彼の前向きな回答に喜んで答えた。

「近いうちに開かれる会議なので…

それはよさそうだね。

ついに私たちの長い復讐を始めることができる。

待て。 ヘリウス、あなたの傲慢さをすべて壊してやる」

ベテルゲウスは大きく笑うとみんなが彼の後を追って笑った。

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