観賞用の恋人
佐々木 煤
三題噺 「影」「告白」「観賞用の廃人」 1話
「旧校舎の屋上で告白すると恋人になれんだって」
「私も聞いた事ある。なんか相手呼び出すんじゃなくて、1人で告白しなきゃダメらしいよ」
「1人でやるとかただのヤバいやつじゃん。学校の怪談?」
休み時間、キャッキャッとクラスの女子が話しているのをしっかりと聞き耳を立てる。そんなラブコメに出てくるような噂、うちの高校にもあったんだ。同じ図書委員の西原さんに恋焦がれるも、告白する勇気がなく高校2年生になった俺はもう神頼みでもしようと思っていたところだった。学校に神様がいるなら丁度いい。放課後にでも行ってみるか。
旧校舎は20年ほど前の新校舎の建築に伴い、選択系の教室として使用されている。部室棟は別にあるので放課後は閑散としている。昼休みに偵察に行った際、屋上には鍵がかかってた。なので、友達のミリオタの野木に頼んで壊してもらうことにした。放課後、旧校舎の屋上へ続く踊り場で鍵を見てもらった。
「こんなヘボい鍵、なんでもないね。問題があるとしたら先生に見つかったらどうすんだ?」
「授業でもあんまり使わないし大丈夫だろ。人生には思い切りも大事だ」
「1年も片思いしてる癖によく言うよ」
軽口を叩かれている間に鍵は開いた。錆び付いたドアを開けると、薄汚れた床と青空が広がっていた。
「告白、上手くいったら俺になんか奢れよ」
野木は屋上に感動することなく、さっさと帰っていた。
屋上の真ん中へ行ってみる。思っていたよりも広くない。とりあえず、西原さんがいるとして告白してみよう。
「1年生の時、同じ図書委員になったときから好きでした!付き合ってください!」
「その告白、叶えたいか?」
知らない声の返答がした。誰かに聞かれていたのかと振り返るも屋上には俺しかいない。
「床を見ろ」
床を見ると、俺の影に白い口がついていた
「もう一度問う、その告白は叶えたいか?」
俺の影が俺に問いかけていた。
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