第27話 可笑しな昼餐
ケニアの屋敷では、オルゲーニ邸へ使いとして送っていたアンゲルの使用人が帰宅をして、アンゲルとヴィヴィとサボに報告をしていた。エメ嬢がやって来たこと。ランドルフにオルゲーニ邸を相続として渡したこと。ランドルフは離婚の事を知っていた。などを報告していた。
一通り話を聞いてから執事のサボが
「誰から離婚の話を聞いたのでしょうね。離婚を知っているのは、今のところ国王と宰相と此処にいる使用人と、ルーベンス様とケニアお嬢様ですが・・・。取り調べの最中に話しますかね?」
アンゲルはあり得るという裏付けを話す。
「ケニアお嬢様とランドルフ様の結婚話が出た時に陛下は自分の第二王子と結婚をさせたかったと言っていましたから、牽制を掛けたのでしょうか?」
使用人は
「でも旦那様が亡くなられたことはご存じではありませんでした。」
すると、ヴィヴィが
「父親が亡くなったことを知らせなかったのは、お灸を据える為だったとか?」
なんとなく理解をしてしまった面々は頷き合ってしまった。
「取り敢えず、もう終わったことだから、忘れて心機一転ここでお嬢様を支えて頑張っていきましょう。」
ヴィヴィが二人に告げると、玄関の扉が開いた。入って来た人物をみて三人は凍り付いた。
「あぁ、ヴィヴィ、サボ、アンゲル久しぶりだね。結婚式以来かな?元気だった?」
明るく入って来たのは先程まで話題に上がっていた張本人のランドルフだった。
(((何でこの方が此処にいるの)んだ))
三人は懸命に平常を保とうとする。気持ちが表情に出ないように。しかし、驚きと焦る気持ちはやはり隠し切れなかったが、ランドルフには伝わることがなかった。
「ランドルフ様こちらにはどのようなご用件で?」
サボが、代表で尋ねると、ランドルフは不思議そうな顔をした。
「エメが嘘を吐いたせいで皆がこちらに移り住んでいるって聞いて。それは僕の意図する事ではないから謝罪に来たんだよ。」
三人は、それを聞いて複雑な気持ちになる。別に謝罪は必要ないし、没落まっしぐらなオルゲーニ邸には戻りたくもなかった。
「謝罪は要りませんよ。ランドルフ様。」
ヴィヴィが明るく気にしてはいないことを伝えようとするもランドルフは悲しげな表情で、
「ランドルフ様って・・・悲しい呼び方辞めてよ。」
実際もう雇い主ではない彼を坊ちゃまと呼ぶ事も出来ないのに何と呼べというのか?三人は顔を見合わせてどうしたものかと目線で会話をする。
「ヴィヴィ。皆が昼食を食べ始めるのに待っているわよ。」
困惑していた三人に助け舟のように現れたのは頭にまだ包帯を巻いている新しい雇い主のケニアだった。
「あら、お客様でしたの。失礼しました。」
ケニアの服装はメイドのお仕着せだった。ケニアはお仕着せが気に入っていて、外出時以外は、屋敷の中では、常にお仕着せを着ていた。ルーベンスは顔を顰めていたが、ケニアには通じなかった。だから、ランドルフは、これが元嫁とは気が付かなかった。結婚式では顔すらも見ていないのだから。
「君、可愛いね。モテるでしょ。」
社交界にも出たことがなく、ほぼ家の中で書類と格闘しているケニアはモテることがなかった。
「モテたことは人生の中で一度もありません。」
きっぱりとケニアが言うとランドルフは顔を赤らめた。
その姿に変な客だと思い早々にその場を離れることにしたケニアは、
「では、ヴィヴィ様、他の仕事がありますので失礼します。」
と腰を折って、逃げてしまった。初めに声を掛けた時にはヴィヴィと呼び捨てだったことをランドルフもケニアも気が付かなかった。
「やばい!何であんな可愛い子がいるの!僕これからどうしたら良いんだろう。」
呆れたヴィヴィは、ケニアだという事を悟られないように使用人扱いをすることにした。
「あの子は駄目ですよ。それ以外でしたら、今まで通りにされたら宜しいと思いますよ。」
と、もう主ではないランドルフに適当に答えてしまった。
これが後々にややこしい事になるとは誰も思わなかった。
「取り敢えず、食事にしようか。」
ランドルフの当たり前に良い放つ言葉の破壊力に三人は、呆然とした。
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