話す

シヨゥ

第1話

「物事を論理立てて説明する。それは縦に伸びる樹木のように、事実が積み重なるごとに説明は長くなっていく」

 そう言って部屋の隅のオリーブの木を指さす。

「だから、まずは始まりと帰結を話すのさ。そうしてその間にある必ず通らなければならに核となる話と、核にはならないけど相手が好みそうなエピソードをいくつか拾って、相手が好みそうな脚色して話す。これで相手に伝わるはずさ」

「脚色していいんですか?」

「興味を持ってもらわないと話は右から左へと抜けていくんだよ。自分のことならともかく、他人のことなんて面白味や興味がなければ記憶に残らない。さっき論理立てて説明することを樹木に例えたけど話も一緒なんだ。たくさんのオリーブの木の中であのオリーブの木を見分けられると思うかい?」

「難しいかも」

「だから面白味や興味を持たせることでであのオリーブの木の解像度をあげるんだ。そうしたら少しは見分けがつくようになるだろう?」

「たしかに」

「ということでここまでの話を踏まえて、報告をやり直してみてくれ」

 そう言って教授は書類を返してくる。

「分かりました」

「楽しみにしているよ。君は雑談力があるんだからきっと面白くできるよ」

 そう言って研究室を送り出された。発表のやり直し。その事実が重くのしかかる。深いため息をつきつつ家路を急ぐのだった。

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話す シヨゥ @Shiyoxu

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