ブラックなプロゲーマーチームのマネージャーだった僕は美少女配信者グループに引き抜かれる!?
雪代ゆき
ヴィクトリービール
『やはり今回も強かった!優勝は【祝い酒】だー!』
RGBが輝く配信スタジオに金銀の紙吹雪が舞い上がる。
そこの中心には今この瞬間に優勝を決めたプロeスポーツチーム”ヴィクトリービール”通称【祝い酒】のメンバーがそれぞれ優勝をかみしめながらギャラリーに手を振っている。
『さて、前大会に引き続いての優勝となりましたが、今の心境はどうですか?』
この大会の実況を担当した男性からそんな質問が飛んでくる。
「まず一番に大きいのはやはり優勝出来てよかったなってのは思います。本当に若い選手たちにはもうついていけませんよほんと!」
気持ちのいい笑顔を浮かべて【祝い酒】のリーダー、ヨルが答えた。
『そう言う割には連続優勝されているようですけど?』
「ただの運ですよ。ついでに言うとロートルの意地です」
『そんな御冗談を、まだまだ現役じゃないですか』
そのままインタビューはヨルを中心に回っていき、終始【祝い酒】の面々は楽しそうに答えた。
『さて、最後となりましたが...【祝い酒】の皆さんはこの後何をするのですか?』
長いことeスポーツ業界で上位組として活動してきている【祝い酒】には、いくつか定番の質問がある。これもその一つだ。
「これは大会をご覧になっている皆さんもわかっていると思いますよ?もちろん答えは決まってます!」
ヨルが他のメンバーに目配せすると【祝い酒】は口をそろえて言った。
「「飲み会だー!!」」
【祝い酒】が声高らかにそう宣言すると会場からさらに熱い拍手と歓声が飛び交った。
そのまま大会は最後まで盛り上がりを見せたまま、大団円で終わりを告げた。
◇◇◇
「あ!ヨルさん!お疲れ様です」
開場の地下駐車場で待機をしていた僕は出入り口から見えてきた【祝い酒】のメンバーに挨拶をする。
「大会見ていましたよ!さすが皆さんです、二大会連続優勝なんて!」
「あー...そんなことはいいんだよ。さっさと車まで案内しろ」
さっきのインタビューとは違い、気怠そうな顔で頭を掻きながらぶっきらぼうに言い放つ。
「あ、こっちです」
「...たく、運転もできねえヤツが自分で用意したみたいな口をするな!」
「ご、ごめんなさい...」
本当にさっきの気さくなヨルはどこに行ってしまったんだろうと思うような豹変ぶりだ。
「まあまあ、今日は優勝できたんスから気持ちよくいきましょう」
「お前もよくそんな口を利けるな、第三ラウンドのカバーリングは何だ?あんなプレイでよく『
「そ、そこを突かれると痛いっスね...」
今回の大会メンバーの一人であるaceが間に入ってくれたが、余計な飛び火をくらってしまった。
「え、aceさん、僕は大丈夫ですから...」
「君がそう言うならいいんスけど...一つ忠告しとくっス、あまり調子には乗らないことっスね」
お気楽なノリで話すaceだが、その目を細く冷たい物に変えて伊織を射抜く。
「ご、ごめんなさい...」
「おい、三人とも早く乗れ。俺は疲れたんだ」
今回の大会メンバー最後の一人である一号が車の窓から顔を覗かせている。
「一号てめぇ何でいつの間に乗ってやがる!」
「三人が何か言い合っているからな。先に乗らせてもらった」
若干熱くなっているヨルを端的な物言いであしらう。
「今回の最多キルは俺だ。文句あるか?」
「...あー、もう疲れた。さっさと帰るぞ」
どうやら今度はヨルが痛いところを突かれたようだ。すぐさま話題を帰宅する事に切り替えて車に乗り込んだ。
「おら、お前も早く乗れよ!」
「は、はい!」
少し呆けてしまっていた僕は急いで車に乗り込む。
「お前は免許類はまだもてねえから勘弁してやっているんだぞ?だったらその分キビキビ働け!」
「ご、ごめんなさい」
車で帰宅中にもまた文句を言われる。だけど、今日はもう遅い時間だから帰ったらゆっくりできる...もう少しの我慢だ。
「あ、そうだ。おい、伊織!」
「どうしました?」
「一週間くらい前に取ったコラボ動画。明日の昼までに編集しとけ」
腕と足を組んだヨルが文字通り、顎で使うように言った。
「ええ!?あれって3日後だったんじゃ?」
「予定変更だ」
「そんなのは無茶です!」
「いいからやれ。これ以上言わせるな」
「...わかりました」
ヨルの強い圧が籠った語気に僕は屈するしかなかった。だって、ここを離れたらどこにも行けないから...
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