"ASSASSIN"─異能組織暗殺者取締部─
深園青葉
第1章
Nowadays
私は椅子に腰を沈め、手元の本の表紙をそっと指で撫でた。水色の布は、私の人差し指を心地よく滑らせた。
嬉しいような、切ないような───この感情は大人になった今だからこそ味わえるものなのかもしれない。
本を開いた時、「ねえねえ」という声がした。
顔を上げると、
「お話聞かせて」
その言葉に、私は苦笑する。
愛菜は毎日、学校から帰ってからの、この時間に決まって私にこう言ってくるのだ。私はそんな愛菜に頼まれるがまま、毎日短い物語を聞かせてあげているのだが、そこまでたくさんの˝お話˝を知っているわけではないし、そろそろ新しいネタが欲しいと思っていたところだった。
「お話かぁ……、そうだなあ」
机に本を置く。
そうして、じっと表紙を見つめる。
水色───快晴のような、澄んだ色。
この色を見ると、私はいつも彼のことを思い出す。
彼から送られてきた本を、再び、手に取る。
この中には、彼に纏わる一連の物語が紡がれている───。
その物語を今の愛菜にしても良いのだろうか?
少々、小学生にするには難しい内容な気もする。
ただ、愛菜はとても賢い子だから、全てとまで行かなくとも理解してくれるだろうか。
そう、少し悩んでいると、それに答える、彼の声が、聴こえたような気がした。
「……今日は昔話、しようか」
私は愛菜に微笑んだ。
「昔話?どんな?」
愛菜が首を傾げる。愛菜はいつも˝お話˝が始まる前に、あらすじを訊くことを欠かさない。
「このお話はね、この本に書いてあるんだけど、全部、本当にあった話なんだ」
「えっ!?すごい」
愛菜は小椅子を持ってきて、机を挟んだ私の真向かいに座った。私はそんな愛菜の反応を見て笑った。
表紙を捲って、息を吸う。そうして、愛菜と、自分自身にこう告げた。
「じゃあ、始めようか。この昔話を───」
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