第一章・それそれとこれこれ・3

 シンセサイザーを持って行った先には結菜と高田と伊藤と小林がいた。

 高田が言う

「あ、キタキタ!」

 私は

「えっと、、」

 と困ると高田は

「あ、そうそう。俺がギターでこのバンドのリーダー。結菜はボーカル・ギター、伊藤がドラムさ。」

 私は言う、

「小林さんは何のパートなの?」

 小林は、

「ウチはキーボードよ。」

 私は、

「え?私はキーボードじゃないの?」

 結菜は申し訳なさそうにこそっと私に言う。

「小林がどうしてもキーボードをやりたいんだって。」

 私は、高田に

「私は何のパートなの?」

 と聞くと小林が

「ベース、お願いできないかな?」

 と言うので私は少し怒ったように

「え?キーボードって聞いてたんだけど、なんで勝手にベースになってるの?」

 高田は

「まぁ良いじゃん」

 とヘラヘラしているので私は困った。

 生まれて物心ついた時からピアノをしてきた自分にとって鍵盤以外の楽器は未知の世界なのだ。

「あのさ、シンセベースじゃダメ?」

 そう、シンセなら持ってる。

 あの坂本龍一だってシンセだ!

「え〜見た目がねぇ」

 と高田はケチをつける。

 伊藤も

「そもそもベースはいらないんじゃね?」

 と言ったので私は本当にキレてしまった。

「ねぇ、あのさ、ベースってのを軽視するのは本当に音楽をなめてる。第一、根音の概念を作り出したのはバッハ。あのバッハよ!ベースはグルーヴを生み出すために必要なものなんだから!ドラムの方こそ、ビートマシンがあるんだから必要ないでしょ?」

 伊藤は黙ってしまった。

 結菜は

「まぁまぁ菜音ちゃん落ち着いてよ。」

 と言う。

 あまり怒らない私だが、少し今回は強く言ってしまったようだ。

「そんなに言うのならもう頼むからベースをやってくれよ。」

 と高田はいう。

 私は

「まぁいいわ、、少し考えさせて。」

 そう言って私は家に帰った。


 家に帰ると、私は「ただいま」を言ってご飯を食べて風呂に入ってさっさと寝支度を済ませた。

 Macを眺める。

 このモヤモヤをぶつけたく、私は山口という男にスマホで電話をかけた。

 彼は私と同じ先生から音楽理論や作曲を教えてらった仲で同級生だ。

「もしもし、どなたでございましょうか?」

 Lineで電話をかけているのにまるでサラリーマンのような受け答えをするのがなんとも彼らしい。

 まぁ変わったやつだ。

「ねぇねぇ、あのさ、私高田にバンドに誘われたんだけどさ」

「ええ!!??僕はあんなに高田と仲良くしてしかも作曲で賞を取ってきているのに誘われないの?ハブられてる?」

 おいおい、、

「え?性格、悪いからじゃないwww?」

 と笑って返すと、

「そっか〜いや〜天才ってのは理解を得られないねぇ」

 と彼は言う。

「自分で言うんかいwww」

 と返した。

「でさ、話戻してよ。」

 おい!自分で話をずらしといて急に戻すなや!と思うが私は話をした。

「あのさ、キーボードって話を聞いてたのに小林とかいう女に取られててベースにされちゃったの、、」

 と言うと、

「誘われただけマシじゃないか、、まぁ楽器が問題ではなく、やる音楽のジャンルが問題でしょ。」

「そうねぇ、、今度また話し合って考えるわ」

 彼は言った

「それより、君は音楽を一人で作った方が良いんじゃない?」

 と言われたが、

「そう?あなたみたいになりたくないわ」

 と言うと彼は大笑いした。

 私も笑ってしまった。

 寝よう。

 彼も寝るらしい。

 電話を切って電気を消した。

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