飲んだのはアイスコーヒー(休載中…)
@nokal
壱, 御昼には本とソファーを
一
一
頁を捲る音が好きだ。
ソファーに座って、本を読みながら飲むオレンジスムージは最高だ。
指先でほんの表紙をリズムよく叩きながら頁を捲る。
本に似合う音楽を聴きながら、そしてたまには目を休ませながら。
僕は今日もそうして一日を過ごす。
ふと窓に目を向けると、曇る窓ガラスの向こう側を歩く学生が目に入る。新品の制服らしきものを着て、足元を少し弾ませながら歩く彼女はどこか幼さが残る女の子だった。
嗚呼、そうか。
もう春か。
そんな些細な日常を目に留めておいて、僕はまた本に目を戻す。
本を持っていない方の指先が空中でリズムを刻む。
きっとこれは僕の癖。
時々本で顔を隠ししあくびを堪える。
周りに誰かがいるわけでもないのに。というかこの場所には僕しかいないのに。
何を気にしてか、僕のこの癖が抜けることはないのだ。
左から右へと目玉だけを一身に動かして、僕はまた頁を捲る。
もうすぐこの本も読み終わる。
僕はいつも通り、テーブルの上に手を伸ばしオレンジスムージが入ったコップを握った。
「…あ……」
残念なことに握ったコップの中身は空っぽだった。
知らず知らずのうちに飲み干していたらしい。
この本もちょうど読み終わるし、キリが良い。買い物がてら少し外に散歩でも行こうかな。
そう思った僕はソファーから足を下ろし、靴を履いた。
青い表紙の本は机の上にわかりやすく置いておく。
そこらへんに引っかかっている上着を掴み、玄関へ向かう。
「行ってきます」
僕は小さくそう言って、家を出た。
「ん〜、やっぱり外は眩しいなぁ………」
僕は空に向かって大きく伸びた。
外が眩しいなんて、当たり前と言えば当たり前なのだが、やっぱりこう何と言うか涙が出てくるような眩しさなのだ。
わかるかな?
別の表現で言うと、年賀年中花粉症みたいなかんじ?まぁ、僕、花粉症じゃないからその気持ちはわからないんだけどさ。
兎に角、そう言うわけで僕は外が苦手。
ものすごく苦手だし、できることなら外に出たくない。
日焼けするし、人に会うし、人に会ったら「こんにちは」「今日は暖かいですね〜」「そうですね」みたいな内容もない会話をしなくちゃいけないし、どうせ話しかけても無視されるし、僕の中で良い印象なんてないんだ。
こうして何となく、買い物を済ませて近くにある公園に来てみたけど、人も多いし、もう帰ろうかな。長居できるほど僕には話しかける誰かがいるわけじゃないしね。
僕には本とソファーさえあれば、最悪生きていける。
あ、そうだ。その前に何か新しい本を購入してから帰ろうかな。家にまだまだ本はあるから、ないわけじゃないんだけど、気分転換にでも良いかと思った。
僕はオレンジの入った紙袋を抱えて1分も滞在することなく公園を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます