39.「Hなこと、しない?」

 広井さんが蠱惑的に笑う。

 白く細い指先が、官能的な熱を帯びて君の頬から、つつ――と徐々に下へ向かっていく。頬から顎へ、顎から首へ、首から胸へ、胸から臍へ、そして肌の上で踊るように動いていた指先が股間にあるべきものを探ろうとして――止まった。


「キミ……女の子だったんだねぇ」

 広井さんはそう言って、んひひと笑った。

 妖艶な熱を帯びた広井さんの吐息が、君の耳をくすぐる。


「……でも、アタシはいいよ?女の子でも……ねぇ、キミはどうかな?」

 肌を這い回る淫らな指先に君は返事もできず、吐息を漏らすことしか出来なかった。


「俺は良くないかな」

「……んん、俺は良くないかなおじさんがそう言うならやめておくよ」

 俺は良くないかなおじさんに免じて、広井さんは引き下がり、図書室には身体に熱を帯びた君だけが残された。


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