20.「やれるだけのことはやってみるよ」
放課後はいつも神殿に向かった。
別に君だって工作が得意だったというわけではない、せいぜいが何もしない広井さんよりはマシ……そのぐらいだ。
広井さんと日常会話を交わしながら、君は神殿を不格好なもので満たしていく。
不格好な祭壇、神棚、仏壇……とにかく色々な宗教っぽいものを作っては、それら全部に破滅の願いを込めていく。
そんな生活が続いて数ヶ月、世界はまだ滅んでおらず、広井さんは夏でも長袖を着ている。
「さぁ……キミ、お祈りしよっか」
学校で広井さんが笑っているところを君は見たことがない。
この神殿の中でだけ、彼女は笑う。
お祈りの後に「早く世界なんて全部滅ぶと良いね」と言って。
そんなある日、広井さんが学校を休んだ。
なんとなく予感がして、君は学校をサボって神殿に向かう。
多分、世界で唯一広井さんが笑える場所で彼女は泣いていた。
「……あれ、学校サボったんだ、仲間だね」
そう言って、広井さんは無理に笑ってみせる。
「別にさ……なんでもないんだよ……なんでも……」
なんでもないわけがないのだ。
なんでもない女の子が、こんな神殿にいるわけがない。
「……一緒に死のっか」
広井さんがボソリと呟く。
「なんて、冗談だよ……冗談、死ぬんじゃない……ぜぇんぶ滅ぼしてくれるからさ」
信じていない神様を信じているフリをしながら、広井さんが力なく笑う。
そんな彼女を見て、君が死んでも良いかな――と思った瞬間、黒曜石が割れた。
卵から雛が孵るように、黒曜石の中から暗黒大滅神が現れて……くそったれな世界を破壊していく。
彼女の気に入らないものを、爽快感溢れるパンチで全部ボコボコにぶち殺していく。
これは――
【君がそれを信じるならそういうEND】
【もしも君がそれを信じないならそういうEND】
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