19.「さぁ、部活動紹介の時間は終わりました、これからは楽しい楽しいあの世紹介の時間ですよォーッ!!」
「さぁ、部活動紹介の時間は終わりました、これからは楽しい楽しいあの世紹介の時間ですよォーッ!!」
まさか、君の正体が殺人ピエロだったとは――君は自分の正体を明らかにし、巨大な鎌を構えた。
「こら、何をやってい……グェェェーッ!!」
悪趣味な冗談を注意しようとした体育教師の首が宙を舞った。
体育館が恐怖に包まれた、君が殺人ピエロというのは何の冗談でもないのだ。
出口に生徒が殺到する――しかし、出られない。火を用いた君の殺人手品によって扉が溶接されているのだ。
出口の扉を叩く音は消え、助けを求める声はやがて悲鳴へと変わる。
それが殺人ピエロの奏でる
「さぁさぁ皆さん!皆さんが行きたいあの世は決まりましたか!?天国ですか!?地獄ですか!?皆さんの悲鳴を聞いていると私は楽しくって楽しくって天にも昇る心地ですよォーッ!!!」
「けれど、キミが今から行くのは地獄だ」
その時、体育館の壁に大穴が開いた。
その大穴からまろび出てきたのは、クラスメイトの広井だ。
君は彼女を観察する。
特に道具を持っている様子はない――そして彼女の周囲には誰もいない。
一人で、そして素手で大穴を開けたというのか。
「さぁ、皆……逃げて!!」
「でも、広井さん!!」
「アタシはまぁ……大丈夫だからさ」
広井が作った出口に向かわんとする生存者達、彼らを逃さんと殺人ピエロである君は大鎌を振るおうとするが――広井の投石が君の手を強く打ち付けた。君が怯んでいる内に生存者達は穴へと向かい、人混みに逆らうように広井は君の元へ向かう。
「ヒヒィ……残念ながら殺戮ショーの観客はアナタ一人になってしまいましたねェ?他の人間の分、楽しんでいってもらいましょうか……」
「悪いね、幕引きの時間だよ」
「そんな事言わずに……楽死んで逝ってくださいよォーッ!!!」
君の振るう大鎌をかいくぐって、広井の手刀が君の心臓を貫いた。
「グェェェーッ!!!」
「……やれやれ、入学早々転校か」
心臓を失った君が爆発を起こす、爆風が広井の肌を撫ぜる。
広井を撫でる死の熱風は彼女の涙までは拭い去らない。
もっと早く駆けつけることが出来れば救えたであろう命。
友だちになれたかもしれない人たち。
広井が殺した訳では無いが、それでも――と思ってしまう。
人生の卒業式と呼ぶにはあまりにも早すぎたそれから背を向け、彼女はまた別の場所に向かう。
散った桜の花びらが大穴から体育館に入り込む。
弔花というにはあまりにも不釣り合いであった。
【DEAD END】
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