9.「全国統一してみない?不良界のてっぺんを取ろうよ」

 君は不良としての才能をメキメキと伸ばし、地元の高校を次々に傘下におさめていった。

 どの高校の生徒も君を見れば頭を下げ、教師どころか警察ですら迂闊に手を出せないような不良の王――それが今の君である。


「んひひ……やっぱりアタシの目は正しかったなぁ」

 玉座めいてバイクに腰掛ける君の身体に広井さんがしなだれる。


「いよいよ、全国制覇だね……ねっ?」

 そう言って、広井さんが笑う。

 その笑いには消しようのない不安が浮かんでいる。

 全国制覇――広井さんはそう言ったが、君はまだそれは出来ないと思っている。

 君は地元を完全制覇したわけではないのだ――そう、あの高校。

 死率 100%入ったら死ぬ高等学校が未だ残っている。


「いいじゃん、あの高校はさ……アレは違うじゃん……」

 君は首を振り、広井さんをバイクから下ろした。

 改造されたバイクは異様な爆音と共に死率 100%入ったら死ぬ高等学校に向かう。


「ねぇ!行かないで!駄目だよ!!あんなとこ!!」

 追いすがる広井さんの声を振り切って、バイクは疾走する。

 時速は一〇〇キロ近くに到達し、スピードを落とさないまま死率 100%入ったら死ぬ高等学校の塀を飛び越える。


「グェェェーッ!!」

 時速一〇〇キロメートルは、死を振り切るにはあまりにも遅すぎた。

 死率 100%入ったら死ぬ高等学校に侵入した瞬間、地面から現れた杭が君の心臓を貫いた。

 君は死率 100%入ったら死ぬ高等学校の敷地内に並ぶ無数の夢の死骸の一つになったのである。

 不良界の玉座は空位のまま、永遠に誰かが座ることはないだろう。


【DEAD END】

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