7.我が人生に「これから」などというものはない、ただ「死」の一文字である。

 どのような過程を経ようとも、人間に死以外の結末は無い。

 そして遅かれ早かれ、人間が終わりを迎えるというのならば――それが今であってはならないなどと誰が言えるだろう。


「キェェーイッ!!!!」

 君は怪鳥のような叫びを上げながら、猛スピードで学校を飛び出した。

 目指す先はどこだ、どこでもいい――結末は同じだ。


「うわぁぁぁぁ!!!坊やが車に!!!」

 その時、君は今まさに暴走するトラックに轢かれんとする幼子を発見した。

 それを捉えた瞬間、思考は極限まで加速する。

 時計の針が凍りついたかのような異様な時間感覚の中に君はあった。

 そして、止まった時の中で――君の身体だけが自由に動く。

 筋繊維の弾ける、ぶちという音がした。


 幼子を拾い上げる、筋繊維が弾ける。

 幼子を歩道へと投げる、筋繊維が弾ける。

 自分も歩道へと戻ろうか、駄目だ――もう身体が一歩も動かない。


 超速で動く代償を君は払った。

 やけにゆっくりと宙を漂う幼子と目があった。

(大丈夫だ、君の気にすることじゃない)


 心の中でそう思う。


(いつか君も行く場所へ、俺は先に行くだけだ)


 凍りついた時計の針が動き出す。

 幼子が歩道へと戻り、トラックが動き出し、自分の体だけが動かない。


 四月、入学の季節。

 道路に落ちた桜の花びらを赤い血が染め上げて、一人の新入生の人生が終わった。


【DEAD END】

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