I PromiseⅡ

ソメイヨシノ

0.伝える言葉

『シンバ、約束だよ』

——ん? んん・・・・・・?

『シンバ』

——んん・・・・・・誰・・・・・・?

『シンバ、約束だよ』

——約束?

『また逢えるよね』

——ん・・・・・・また逢えるさ・・・・・・。

そう答えると、甘く優しい香りを残し、その声は遠く儚く消えてなくなる。

この香りはディジーの花の香りだ。

誰かが、窓を開けたんだろう、そのせいで香りが部屋に入って来たんだ。

なんせディジーの花は年がら年中、馬鹿みたいに、そこらで咲き乱れている。

だけど、目を覚ましても、窓どころか、扉さえ開いていない。

殺風景な何もない自分の部屋で、何度、同じ声に起こされただろう。

『シンバ、約束だよ』

何を約束したと言うんだろう。

そして、なぜ甘い香りがディジーの花だとわかるのだろう。

なぜディジーの花は年がら年中、咲き乱れていると知っているのだろう。

それはいつの話なのだろう。

そんな花、もう古代植物として、今となってはどこにも見当たらない。

僕は何かを忘れているのだろうか?

誰かと交わした約束を——。

僕に伝えるその言葉は、僕が約束を思い出すまで、僕の中に息衝いているのだろうか——。

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