君の人生は今、始まった!

ゆりえる

第1話 長い充電期間の終わり

『自然界に存在しているものに何一つ不要なものなんて無い。それが、例え、元々の地球には存在せず、宇宙から飛来したものだったとしても……』


 何だろう……?

 これは、夢の続きだろうか……?


『やっと始まったよ! 君の待ち侘びていた時間が……』


 これが、夢だとしても、僕の中で、幸せの一部に感じられる!

 もしも、誰かに、起こしてもらえるとしたら、耳元で、こんな心地良く響いてくる声で起こされたかったのだから!

 

 ……そんな願望が叶ったかのような、朝のひと時。


 こんな耳あたりの良い爽やかな声を聴かされたのは、いつ以来だろう?


 中学時代のクラスメートの女子に、そんな癒し声の持ち主がいた。

 顔自体は、可愛いとかキレイとかってわけじゃなかったけど、ウグイス嬢っていうのかな?

 声だけ聴いている分には、すごく心地良いタイプの女子。


 席が近かった時、休憩時間に耳に入って来るその声で、子守歌を聴かされていたように、ウトウトしかけた事が何度も有った。

 心をリラックスさせてくれるα波的な声のようなのに、聴いているうちに、癒され過ぎて、θ波となって、眠りを誘うような声音。

 

 あの子に似ている声が、僕だけの為に囁いてくれているという幸せ!

 ああ、出来る事なら、このままずっと、聴いていたい!


『とても長過ぎる充電期間だったね。この間、色々変わってしまったよ。君は気付いていた……?』


 君は……って?

 やっぱり、僕に語りかけているんだよね……?

 

 気付いていたか……って?


 僕は、世の中に関わりを持たない生活をし続けていたけど、ネットは、外の世界の事を伝えてくれている。


 だから、目を覆いたくなるような事が、沢山有ったのを情報としては知っている。

 

 僕、戸波となみ功太こうたが、引きこもりになってから、早くも3年という月日が流れていて、僕が変わらずにいるその間に、世の中は、思いがけない方向へと急変していった。


 僕は、関わり合う事を止めて、ただの傍観者となる道を選んだけど、まさか、それがこれほども長く続くとは思っていなかった。


 いつか、こんな僕だけの変わり映えの無い毎日にも、終わりが来るような予感が、漠然とだけどしていた。


 それが、今かも知れないなんて事、まだ全く予測は出来てなかったけど……


 でも、こんな澄み渡った青空のように爽やかでキレイな声が、僕を導いてくれるのだとしたら……


 こんな癒し声で、皆から忘れられたような僕をまた元の皆の所へと引き上げてもらえるのだとしたら……


 それは、何だか不思議でしかないんだけど……


 例えば、今、この瞬間から、そういうのがもう始まったとしても、億劫どころか、快く思えているような、これまでと違う感覚になっている僕がいる!!

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