第2話 腐の者たち

「おいレオ、何だよこれ?女の化粧品ばかりじゃん!」

「お前、見た目からして、やっぱ男のかよ!ぎゃはは!」


放課後の校舎の廊下の隅、

1-D組:東山怜王ひがしやまれおは、

数人のクラスメート男子に囲まれ、

カバンの中身をぶちまけられ、小突き回されていた。


「ぼ…僕、将来メイクアップアーティストを目指してて…」

「う~わ、いかにもって感じ!」


レオが泣きそうになっていると、

急に同級生たちの小突きがとまり、

廊下の向こうから異様な空気と複数の足音が近づいてきた。


ティーン雑誌でよく見かけるすこぶるつきの美人を先頭に、

三つ編みポチャメガネと姫系女子が鬼の形相で近付いてきたのだ。


1-C組:斎藤さいとうみるく、通称ミルキー。

3歳の頃からの雑誌モデル。

全学年男子の憧れの的。


1-A組:高梨英子たかなしひでこ、通称P'ピーデコ。

テストは常に100点の学級委員長で1年生代表。


1-B組:小早川絵里香こばやかわえりか、通称リカちゃん。

家庭科が得意で、可愛いものが好きな、

小早川財閥こばやかわざいばつの令嬢。


「ムン!ムン!ムン!」


レオを小突いていた男子たちの頭は、

P’デコの分厚いタイ語辞書で次々にスパーンと叩かれ、

ミルキーが男子たちを見下すように言葉を吐き捨てる。


「この非モテのクズ野郎ども!

アタシらのレオを苛めるんなら、

今後はそれなりの覚悟して?」


P'デコが黙々もくもくと散らかったものをカバンに戻し、

リカちゃんがレオと腕を組んで甘い声で言った。


「レオ。リカ、クッキー焼いてきたから部活で食べよ♪」


全男子の憧れの的のミルキーを含めた女子3人に囲まれ、

イチャイチャしつつ立ち去るレオの姿を、

男子たちは理解できずに呆然と見ているだけだった。


「何でアイツがあんなにモテるんだよ?」


今や4人はBLの固い結束で結ばれた仲良し”ものたち”であり、

放課後は常に行動を共にしていたのだった。

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