第5章 旅立ちの前に

「はぁ~…。茶がうまい…。」

ガロウ団長は、お茶を啜りながら「さて…」と話を始めた。


「氷の魔方師アルスと火の魔法師トウマだったかな?

まずは、魔法入試試験おめでとう!」


「これで、軍事資格と魔物討伐の資格を得ることができたわけだが…。それが、目的ってわけではなかろう?理由を聞いても?」


「何が目的でも、関係ない。早く要件だけ言ってほしい…。」


冷たく言葉を返すアルスに「なんじゃ…。少しぐらい年寄りとの話に花を咲かせぃ!」

ガロウ団長は拗ねたような口振りで口を尖らせた。


アルスは、相変わらず無表情のままだし、ガロウ団長のノリに、どういう反応すればいいのか分からない トウマは緊張で吐きそうになっている。


ガロウ団長は二人を見つめ、フッと笑うと話を進めた。

「2人には討伐へ行ってもらいたい。西にある『幻影の森』なんじゃが…」


「…通称『死者の森』…」

「死者っ!?幽霊でるのかよ!」

アルスの一言に、トウマは過剰に反応してしまった。

「何?怖いの?」

「あー!アルス!てめぇ、今、笑っただろ!」

「笑ってない。ちょっと、口元ゆるんだだけ…」

「笑ってるじゃねーか!」


「トウマの言うとおり、あの場所は『死者の森』と呼ばれていてな…。

『幻影の森』でしか採集できないクリスタルがあるのだが。

死者の世界を写しだし、死者が森を彷徨うように見せていると言われている…。不思議な話、死者と会話もできるらしいがな…。」

「最近、魔物が出る噂があってな…。死んだ者に会いたいと訪れた人達が殺されているらしい」


「それなら、シオン帝国軍の討伐班に行かせればいいじゃん!あっ…行かれたらよろしいかと思いまして…てか、討伐班いるじゃん!なんで、俺達に頼むんだよ!」


「トウマ…怖いんだね…」


「怖くねーよ!てか、なんだよ。その目!やめろ!」


「討伐班は向かわせたのだが、誰も帰ってきてないらしい。この件に関しては管轄外でな。私の独断なんじゃよ。」


「独断?なんで?」

アルスは眉をよせる。


「教えんよー!何が目的でも関係ないもーん!ねっ?要件は、討伐!後は、なにがあったか報告!アルスも教えてくれんかったから、私も教えんよ!」


ガロウ団長、その ノリは駄目です…。完全に、アルスの不機嫌スイッチ入れました。

トウマは気が通くなる感じを堪えて、窓から外をボンヤリ眺めた。


「ただ、一言」

ガロウ団長は、とても柔らかい優しい表情で続けて「命の危険を感じたら、その場所から直ぐに立ち去ること。では、宜しく頼む」

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