俺はモブ人生を謳歌します
伊佐波瑞希
第1話
昼下がりの教室
女生徒が友人と会話に花を咲かせていた
「お聞きしました?またあの方がご活躍されたそうですよ」
「聞きましたわ!!今度は隣国の港町に現れた海竜を討伐されたとか!!素晴らしいですわ!!」
「あら、それだけではありませんわ!!その港町に蔓延っていた密輸組織を壊滅させ、奴隷として他国に売られてしまいそうになっていた人々を助けたとも聞きましたわ!!なんてお優しい方なのかしら!!早くご帰還されないかしら、お話をお聞きするのが楽しみですわ!!」
「まぁ、ずるい、私もお話したいですわ!!」
笑い合う少女達
彼女達が話しているのは今やこの国、ランベル王国の英雄にて、第二王子のアルファード・ランベル
彼は天才だった、若干5歳で汚職を働き騎士団の質を下げる騎士団長を自身の剣で叩き潰し、世界で5本の指に入る実力を持つ事に慢心し、この国を手に入れようと暴走した魔法師団長をその圧倒的な魔法で黙らせ、裏組織と手を組み悪事を働く貴族たちをその類まれな頭脳を活かし裏組織毎駆逐した。
さらにそれでは収まらず彼は独立治安部隊を設立し、この国の腐敗した悪をどんどん粛清した。そのかいあり、いまやランベル王国は世界一平和で綺麗な国として有名になった。
そんな彼も15歳になり今はランベル王国の貴族子女が通う学園ミルバーナ魔法学園に席を置いていた。この学園は成績順にクラス分けがされており、彼は一番優秀で在籍人数が10人と少なくまさにエリートとされるSクラス、それも主席である。入学して間もなく彼は自身が設立した治安部隊『シール』とは別に、Sクラスのメンバーだけで構成された組織『ソード』を設立し街に現れた魔物や未攻略のダンジョンなどを月々と討伐攻略していった。
そんな彼に憧れる生徒は多く、彼の話題を聞かない事は無いほどだ
その証拠にこの教室、Aクラスの総勢20人の内19人はアルファード・ランベルと彼が組織した『ソード』のメンバーの話で盛り上がっていた。
ちなみに残り2名盛り上がるクラスメイト達の和に入らなかった者がいた。
窓際の自身の席でボーっと空を眺める一人の少年
ルシル・フォードは空を漂う雲を見ながら
「平和だな~」
と一人つぶやく
彼のつぶやきは話に盛り上がるクラスメイトの誰にも聞かれることはなかった。
☆☆☆
「それでは本日の授業はここまでとする。知っていると思うがこのあと講堂にて帰還した『ソード』のメンバーを祝う懇親会があるので希望者は講堂に行くように、まぁ、行かないやつはいないだろうがな、それでは解散!!」
教師が教室を出ると教室内はざわめき出した
だがそんなクラスメイト達の中をまるで存在感を感じさせない動きで出ていく者がいた
ルシルだ
ルシルは誰にも気づかれることなく教室を出る
そして自身が寝泊まりをしている学生寮に向かい歩き出した
『よろしいのですか?』
歩き数分ルシルに話しかける者が現れた
それは赤と緑の毛をした小さな鳥だった
鳥はルシルの肩に止まると再度ルシルに話しかけた
『懇親会に参加されずに良かったのですか?』
再度問われた質問
ルシルは右手の人差し指で鳥の頭を軽く撫でると
「いいのいいの、俺には関係ないし」
『しかし学園に入学して早半年、友人の一人も居られないではないですか?懇親会に参加すれば誰かと友好を結べるかもしれません』
「いいよ面倒くさい、友人なんてお前達がいればいいの」
『しかし』
「しつこい、俺はもう懲りたんだ仲間、友人そして家族皆やがて裏切る。」
そう言い遠くを見つめるルシル
その瞳には光すら焼き尽くす怒りが見えた
そんなルシルを見て鳥は黙るしかなく
一人と一匹は静かに学生寮へと歩いて行った
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