第4話(たしかに、お前の言いたいことはよーくわかる)


「なんて、ことだ!」



俺はとんでもない選択を迫られている。目の前にある3つの重要な選択肢の中から一つを選ばなければならないのだ。


そのうえ、何が良くて何が悪いなんてこともない、全部良いのだ。良いからこそ、こうやって悩みあぐねてしまう。



「くそっ、一体どうすれば、どうすればいいんだっ!!」



「おーい、早くしろよ、いい加減腹減ったよ。どれにするか早く決めて」



そう、俺は大街道の中にある3つ牛丼チェーン店の中から昼飯をどれにするかを決めかねている。


そもそもおかしな話なのだ。同じ牛丼チェーン店3つが向かい合っているなんて。牛丼を食べたい客が3つに分散してしまうに決まっている。


現に俺がどこに行こうか迷っているのだから。



「こうなったら仕方がない。かくなる上は…!」



こういった問題の最適解はこれしかない。


俺は意を決してある店の中に入っていった!


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今、俺と山田は席に座り、注文したものが来るのを待っている。



「お待たせしましたー」



注文したものが来ると、俺は頼んだポテトに手を伸ばす。



「なんでこの流れでハンバーガーなんだよ!早くしろとは言っても俺も牛丼の口だったんだよ!どれか選べよ」



そう、俺は牛丼屋を選ばず、あえてすぐ近くのハンバーガー店に入ったのだ。



「いいじゃん別に、おいしいし。それにいいか?人間ってのはな、選択肢が多いとストレスを感じてしまう生き物なんだよ」



「なんだよそれ!それじゃあもとから牛丼を選択しに入れるんじゃねーよ!」



山田の文句に対して俺は別視点で発言する。



「それにな、家の近くにハンバーガーチェーン店なんて一個もないじゃん、マジで久しぶりよ、ハンバーガー食うのなんて!」



俺の地元には牛丼チェーン店が1つあるものの、ハンバーガーチェーン店は1つも存在しないのである。


俺たちにとってハンバーガーは、お出かけの際のお土産みたいなものなのだ。



「ま〜確かにそうか、違う日にでも食えばいいのか」



山田が納得したようにそう言うと、俺たちはハンバーガーにかぶりつくと、思わず揃えてこう言った。



「やっぱうめーな!!」



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「さ、今度はお前の番だぞ!」


俺たちが店を出た後、山田は俺にそう言ってきた。



「は、何が?」



俺は意味がわからずそう言うと、



「何言ってんだよ、さっき俺にあんなことさせておいて!お前だけ逃げるなんてずるいぞ!」



山田はさっきのナンパの件を根に持っているらしい。しかし、



「お前こそ何言ってんだよ、あれは山田が女の子に話しかける練習だろ。俺には関係ないだろ」



俺はきっぱりと断らせていただきます。



「ふざけんなよ、おまえにも人の心があるのなら、謝罪の気持ちとして一回やってみろよ」



たしか俺もにあの光景を見せられて申し訳ない気持ちがないわけではない。だが、俺にもできることとできないことがあるのだ。



「ごめん、マジでごめん。あの時は悪かったから、もう水に流そうぜ?」



「だから、申し訳ない気持ちがあるのならお前もやってみろよ!」



山田は思いっきり俺の背中を押してくる。



ヤバい、俺はこの状況から逃げることができないらしい。



「わかった、わかったから。一回やってみるから」



こうなったら仕方がない。一度だけ、一度だけだ。それに俺はここに住んでるわけじゃないんだ。一度あったら最後、もう会うことはないんだ。


俺は覚悟を決め、人ごみに突っ込んでいく。


一回だけ、一回だけなんだ


俺はそう自分に言い聞かせると、一人の女性に目を向け、話しかける。



「あの~すいません、ここからロープウェイ乗り場まではどうやっていけばいいですかねー?」



「あーそれでしたら、大街道を北側から出ていただいてそのまま直進していただくと見えてくると思いますよ」



「そうですか、すいません、ありがとうございます」



そして俺は山田のほうへ戻る。



「どうだ?俺もやるときはやるんだぜ!」



俺はドヤ顔でそう言うと、



「ばかやろう!それでいいわけねーだろ。ナンパはどうしたよ、ナンパは?」



「ですよね。いいわけないよね。でもね、俺にはこれが限界なのよ。ゆるしてよ、ね?一応女性に話しかけたわけだし」



俺は山田に必死に懇願する。頼む!俺にこれ以上は求めないでくれ!














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