第18話 ↓↘→+P
翌日。
薬を売っていた組織について調べることは楓と葛城に任せて、俺と歌音はいつも通り学校に来ていた。
茶髪ピアスはいつも通り朝から学校に来て、バカ女はいつも通り遅刻。
……このバカ女、よく3年まで進級できたなぁと思いながら、歌音が教室に来る前に、屋上へ向かう。
階段を上りながら、歌音に『屋上にいるから、教室には来るな』と念のためメッセージを送る。
それから屋上に到着し、楓の作った弁当を食べている最中、歌音が屋上に着いた。
「屋上にいるなら、そう言ってくださいよ」
歌音の言葉に、俺は眉を顰める。
「もしかして、メッセージに気付かなかったのか?」
「メッセージ? ……あ、気付いてませんでした」
きょとん、とした表情を浮かべてから、全く悪びれた様子もない歌音は言った。
「仁先輩の教室で、上級生相手に仁先輩の行方を聞いて回ったのは、まるきり無駄な時間だったわけですね」
……教室に戻ったら、クラスの連中にめちゃくちゃ睨まれるんだろうなぁ。
はぁ、とため息を吐いてから、俺はあらかじめ購入していたイチゴ牛乳を飲む。
その分かりやすい甘さに、ストレスが和らぐ。
歌音も、俺と同じく楓に渡された弁当を広げていた。
「俺の行方の聴き取りだけじゃなく、頼んでいた聴き取りの成果はどうだ?」
昨日のうちに、歌音に頼んでいたことがあった。
既に、この学校の生徒に例の薬が出回っている可能性がある。
だから、様子のおかしい生徒がいないか、歌音に聞いて回ってもらっていた。
「友達何人かに聞いてみたんですが、1,2年生にはあからさまにおかしい行動をしてる人は、私だけしかいないみたいです」
「……歌音だけ?」
「急に学園の嫌われ者である陰キャの仁先輩と恋人になったことで、今の私は自分が思っていたよりもずっと、おかしな奴扱いを受けているようです」
歌音は皮肉気に笑った。
俺は正直自業自得だろう、としか思わなかった。
「それで、3年には誰かいたか?」
「まずは仁先輩ですね」
……学園の嫌われ者の俺が学園一美少女の歌音と恋人になれば、変な噂も立って当然か。
「他には?」
俺の言葉に、歌音はあからさまにため息を吐いてから、
「そもそも、
「俺が聞いて回ってもろくな回答を得られないだろうという簡単なことすら分からないのか?」
歌音の皮肉には、俺も皮肉で返す。
「自分で言ってて悲しくなりませんか?」
「悲しくなんてないもんっ!」
俺は首を振って答えた。
歌音はそんな俺を優しい眼差しで見つめていた。
その優しさがとても居心地悪かった。
「そうそう、3年生にはもう一人様子のおかしな人がいるらしいです。それは、あのタカビー先輩です」
「……いつも通りにしか見えなかったんだけどな」
俺の言葉に、歌音は呆れたようにジト目を向けてきた。
「ここ最近、遅刻の頻度が以前にも増しているみたいですね」
知らなかった、というかあいつのことなんて全く眼中になかったので、気付かないのは無理もなかったか。
「それを心配したお友達が聞いたところ、どうやらタカビー先輩はパパ活をしているようです」
「パパ活、か……」
俺が呟くと、歌音は目を伏せて「そうみたいです」と応じた。
彼女は、以前『田中一郎』のせいで怖い目を見ている。
だから、パパ活には忌避感があるのだろう。
「どこまで本当のことを言っているのかは分からないらしいんですが、お友達が聞いたところ決まった相手と夜ご飯を食べるだけ、らしいです」
「それが本当か嘘かは分からないが……もしかしたら、そのパパ活で薬を買う金を稼いでんのかもしれないな」
「……私、思ったんですけど」
歌音はそう前置きをしてから、続けて言う。
「この間、私がタカビー先輩を見たときに一緒にいた強面の人がパパ活の相手なのかなって。……もしそうだとしたら、やっぱりチャラ男先輩も、何か関係があるのかも、です」
歌音の言葉に、俺は頷く。
「その可能性も、十分考えられるな。……聴きこみ、よくやってくれた。助かった」
俺の言葉に歌音は、
「食と住とお金を提供してもらっているので、このくらいお安い御用です」
と言って、楓の弁当を口に運んだ。
その割にはこいつ結構文句言ってたよな、と俺は彼女の横顔を見ながら思った。
報告を聞き終え、弁当も食べ終えて、少しした後。
楓から着信があった。
『お疲れ様です、若。楓です』
『おう、どうした?』
『薬の売買をしている組織が判明しました』
淡々と楓は言う。
仕事が早い、流石は楓だ。
今日中に特定はできると思っていたが、予想以上だった。
『よくやった、楓。それで、その組織ってのは?』
俺の言葉に、『恐れ入ります』と答えてから、楓は続けて言う。
『その組織の名前は――【
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