第43話

「そうだな…そのような事もあったな…」

「…そうですか…」


王妃様はエドワード様の幼い頃のお話を私にしてくださいました。

私は胸が苦しくなってしまいます。

「そんな…側室様は…ひどいです…」

「そうだな…メアリー…」

「…その側室様の行為がエドワード様を呪術の器にしてしまったかもしれません。」私は声が震えてしまいます…


王妃様が途中エドワード様に手を差し伸べてくださったおかげでその呪術は力を弱め…このような中途半端な形でウィル様に降り掛かっているのでは…

今回身体に異変が起こるきっかけ…心が肉体が疲れているときだわ。ウィル様の防御力が低下したとき…

この弱い呪術がウィル様になんらかの影響を与えている…


…もしも…王妃様が手を差し伸べてくださっていなければ…呪術はもっと強力な物になっていたのではないかしら…


「うぅ…許せない…」

「メアリー…呪術の内容の予測がつけば…恐らく魔術師がその軌跡を辿ることができるだろうな…でも…」

王妃様は立ち上がると私の隣に来てくださり優しく背中を擦ってくださいます…

涙がポツポツ落ちる…


「エドワードは勿論知らぬまま器になった被害者だ…」

私はコクコクと頷く。

「もしも…今回エドワードの母親が犯人だったとして…彼女は見逃してやってくれんか?」

「そんな…ウィル様を危険に晒した者を…許す事はできません…」

私は王妃様を見つめて言いました。

「メアリー…彼女はもう気が触れておる…」

私は下を向く…

気が触れていたとしても…無意識に呪術を行う者は危険だわ…

「彼女は最愛の者から捨てられた。

新しい女に鞍替えされて…以降まるで見えぬ者のように扱われておる…金だけはふんだんに渡されてな…」


私は…何も言えなくなる。

その側室様は気の毒だわ…でも…ウィル様に危害を加える者は許さない…!!

私は王妃様を強い眼差しで見つめた。


「メアリー。強くなったな。

王妃には…時には譲らぬ部分も必要だ。ここは…譲れないか。」

「はい。ウィル様に危害を与えようとする者を…私は許すことができません…」

「そうか…では、彼女の記憶を消すのはどうか…?王宮に関しての…我々に関しての記憶を消そう。記憶の喪失はかなり強い処罰になろう…そうすればもう呪術はかけられん…」

「…王妃様…なぜそんなに彼女を庇うのですか…」

私は涙を流し訴えました。

とても…王妃様のお考えが理解できなかったからです。

エドワード殿下のためにも、ウィル様のためにも…もっと強い罰を与えるべきだわ!


「メアリー…私には男女の愛情はわからん…」

「…」

「しかし…私は子どもを愛しておる。彼らが急に…私と縁を切ったら…『愛しておる。』『大好きだ…』と少し前までは申しておったのに…」

「…王妃様…」

王妃様は俯きおっしゃいました。

「それは…この世で一番の処罰になろう…死ぬよりも辛かろう…彼女はもうその経験をしておる…」


「王妃様…それは…」

側室様だって…王妃様のお気持ちを考えず王様に近付いたではないですか…

婚約者として側にいらっしゃったのに…


「私は…王を止めるべきだったのかもしれん…学園時代から彼女は純粋な女だった。自由奔放で…

そのような者に…王宮は似つかわしくなかったのだ。

もう少し…客観的に…言い方を変えると情が薄くなければ…」王妃様は寂しそうな顔をされました…

私は思わず手を握ります。

王妃様がこちらに目を向け、私の目をじっと見つめられました。


「私はその責務から逃げた。傷つきたくなくて…

王に男女に対しての情は昔からなかったが…やはり大切にされないのは辛いものだ。好きにしろと…二人を見放したのだ。」

私は鼻がつんとなり…涙が止まらなくなってしまいました。

王妃様…

さぞ…御辛かったでしょう…

王妃様は私をそっと抱きしめておっしゃいました。

「私のために…涙してくれるか…メアリー。

私はこんな優しい娘ができて…本当に幸せなんだ。何も泣くことはないぞ。」と







「王太子妃殿下。調査結果が出ましたのでご報告に参りました。」魔術師様が膝を付きおっしゃいます。


ウィル様は私の腰を抱き側に寄り添ってらっしゃいます。

「なんだ、俺への呪術のか」

「はい、ウィル様。

魔術師様…どうでしたか?」

「はい。王太子妃様…あなたがおっしゃる通りの人物でございました…

呪術の軌跡を辿り、強さを測りましたがもう呪術の力は殆ど残っておりません。このまま消えてなくなるでしょう。」

「そうですか。」



私は王妃様の案を飲んで

側室様の記憶を消し遠くの国での生活と王宮に近付かない事を条件に手を打ちました。


「もう呪術を掛けたものは記憶がないようですし…これで安心ですな。」


「はい。魔術師様…ありがとうございます。」

「これで俺も体におかしな変化はなくなるのか。なんだかやっと人心地ついたな!メイが俺のためにたくさん動いてくれたそうだな。ありがとう…メイ」

そう言うとウィル様は私を抱きしめて優しくキスをしてくださいました。




その日のよるウィル様は寝室で私を抱き寄せると「メイ…今宵も子作りに励むとしよう。」そうおっしゃるので、「はい…ウィル様。」なんて男らしいお言葉…と、私はお顔が赤くなってしまうのです…




その後も私たちは子作りをたくさんしてから眠りにつきました。

ウィル様はいつも私を優しく抱きしめながら眠りにつかれます。…幸せ…ウィル様…ずっと一緒にいましょうね…




私はその夜、お空のお星様がお腹に飛び込んでくるとてもかわいい夢を見ました。

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