第22話

お兄様が腕を組みながらうんうんと頷いている。


「そうかな~と思ってはいたんだよな…」

「ええ…私はてっきり嫌がらせをしていると思ったわ…」

殿下はお姉様に嫌がらせをしている…と私は常々思っていた。

食べ切れない量のお菓子を贈り続けたり

普通の女性は好きでないだろうカエルのぬいぐるみを特注したり…

おまけに試合会場では食らいつきそうな目でお姉様を見つめてた…!!


好きだったからなの…?

…男って…

男って…


「好きじゃない女にあんな頻度では会いたがらないだろう…それにポリーをすごく大切に扱ってくれていたぞ…」


お兄様はリビングに生けられた花を眺める。

「ポリーが花が好きだとわかったら…

こうして枯れる前に花を贈る…そんな事はできないだろ。どうでもいい女には…」


私はなんだか人の心って面倒くさい…そう思った!

もういっそのこと殴り合いで決めたらいいのかも!!

どうやるのかはわからないけどね!






「…?訪問の予定はないはずだが…」

ウィル様は名残惜しそうに私から離れ、ドアに向かい話しかけてらっしゃいます。


「誰だ?」と


ウィル様は少し乱れた私の髪を手ぐしで整えてくださいました。


「ウィル…私…」


かわいらしい声が響きます。


「なんだ?訪問の知らせを受けておらぬ。会うことはできない。」

「お願い…どうしても話したい事があるの…」


ウィル様はちらりとこちらを見ました。

…お話し位は聞いて差し上げては…?


「…メイと共になら許可しよう…それとお前の兄も連れて来い。」


ウィル様は凛とした声でそうおっしゃった。






うぐぐぐぅ…

なんなんだ…

なんだ!!!


メイとの甘い時間を邪魔しおって…!!

今…キスをしてとろけるメイの顔をガン見しようと思っていたのに…!!

こいつはなんなんだ!!

来るな…来るな!!


なんだ…

もう…

俺はこんな事はすぐ終わらせてメイとイチャイチャする…と気合いを入れた。





「殿下…申し訳ございません…!!」

ユウジは汗ダクダクで肩を大きく上下させている。

慌てて来たな…気の毒な奴…


「ユウジ…メイは優しい女だ…いつも通りにしろ。」

ユウジの後ろにはヤツの妹が佇んでいて

なんだか暗い雰囲気を漂わせている…


「ウィル…これを飲んで欲しいだけなの…」

彼女はなんだか赤茶色の液体を差し出してくる。

いや…

いやだな。

それは飲みたくない。

毒なのでは?


「いや、それは私は飲めない。毒ではない保証がない。」


「お願いウィル…これは本当の心がわかる薬なの…飲んだら真実を話してしまうのよ…」


彼女は俯き肩を震わせる。


「これであなたの本当の心を知ったら…もう…諦めるわ…」


ん?

諦めるとな!

飲むか!


「ウィル…魔術師に鑑定してもらおう…我が妹ながら信用ならん」

…だな。


魔術師を呼び寄せ液体の成分を鑑定させる。

魔法陣を出してそこに液体を置く。

何やら呪文を唱えると空中にたくさんの記号と文字が浮かび上がる。

魔術師はそれを一つ一つ確認している。


メイは初めての魔術を前に目をキラキラさせている…

かわいい…

俺はメイの頭に頬を寄せスリスリした。

…しかし…

年老いてはいるが魔導師とて男だ…

あまりかわいい顔をするな…メイ…



「どうやら毒薬ではない様子。自白剤のようなものです。」

「飲んでも平気か?」

「はい、恐らく1時間程で効果が切れるでしょう。」



そうか…ご苦労であった。

と魔術師を帰らせると、俺は謎の液体をぐいっと飲み干した。

ん…?

全部飲んでいいのか?

用法用量を確認しなかったぞ!

不覚…

…なり…







ウィル様は液体を一気に飲み干されました!

それはそんな量飲んで平気なのですか!?


私は心配になって近くに寄る。

ウィル様がゆっくりこちらを見ると


「誰だ君は」と言った。

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