第19話

なんだかモヤモヤすると思ったら…!!

メイとお茶を飲んでから一週間も経ってしまってるではないか!!!

これはいかん…

今すぐ用意をして、

今すぐメイを呼ばねばならん…!!!


メイはチョコレートが好きだからな…

特にこの丸いチョコレートが好きなようだ…

たくさん用意しておこう。

他の種類も混ぜておこうな…


今日はクッキーもチョコがけにしておこう。

ふふ…

メイは喜ぶに違いないぞ…

ああ…楽しみだ…

なんて楽しみなんだ!! 



…ソワソワする…

もう彼女の馬車は王宮に着いたようだし…


ふむ…

迎えに行くとしよう。


メイは少しぼんやりしている所があるからな!

道に迷ったら大変だ!





私はウィル様に声を掛けられて王宮を訪れている。

「久しぶりにお茶でも飲もうではないか」

一週間前にもお茶を飲んでいるんだけど…忘れてらっしゃるのかしら?

久しぶりではないのでは…?


でも…王族の方は限られた人としか交流ができないし…寂しいのかもしれないわ…


そんな事を思いながら私が王宮の廊下を歩いていると

向こう側からウィル様が歩いてきた。


私は少しだけ急ぎ足でウィル様の元へ行く

あちらも早足で歩いてきてくださって


「メイよく来たな」とおっしゃいながら私の手をとられました。

「お招きいただきありがとうございます」

私はお辞儀をしてウィル様について行きます。


二人で廊下を歩いているとパタパタと足音が聞こえてきました…

「ウィルー!!!」

あらやだ…ウィル様と恋仲の女生徒だわ…!

私ったら…!

てっきりウィル様と二人きりかと…

今日は顔合わせ等も兼ねてお誘いいただいたのかもしれないわ。

彼女も一緒なのね…!

…王族と結婚するのだもの…

側室の一人や二人許容する広い心がなければいけません…!


ハァ…何かしら…なんだか胸がもやもやするわ…

あら!

こんな手を引かれていては彼女が嫌な思いをしてしまうのでは…?いけないわ…!

結婚後もできれば険悪な関係にはなりたくないし…


私はさり気なく手を離そうとするけれどウィル様がギュウっと握って離してくれない…


「…ウィル様…手を離してくださいませ…」

「…イヤだ」

こちらをじっと見つめて拒否されてしまった!!

でもでも…

私なら好いた相手が他の女性とエスコートとは言え手を繋いでいたら嫌だわ…!

男性は平気なのかしら…!

それともこの二人の間ではそんな事は気にならない位愛が深いの…!?

…嫌だわ…

なんだか今日は気分が落ち込みがちな日みたい…

曇りだからかしら…


「…ウィル…?」

あー…女生徒がこちらに来てしまいました…

悲しそう…


女生徒は私とウィル様を交互に見て


「え…?どういうこと…?」

とおっしゃっています…!!

うぅ…嫌だわ…

私のせいでなんだか悲しそうな声を出されるのが…

「あの…」

「俺の婚約者だ」

ウィル様!?

やめて…やめてくださいませ…


「え…?ウィル…婚約者とは不仲なんじゃ…」

「そんなことは…言っていない」


「ウィル…!私との事はどうす…」

女生徒は後ろにグイっと引かれたかと思うとそこに女性が現れた!

「娘が…申し訳ございませんでした!」

とハキハキ謝罪すると女生徒を引きずりどこかへ行かれました。

「お母様!離して!

私…ウィルと話があるの!」

遠くでそんな声がする…


私は呆気にとられてしまった。

…なんだったのかしら…?…嵐…?


「メイ…嫌な思いをしただろう」

ウィル様は私の手をギュウっと握ると腰を抱いてエスコートを続けます。


私はなんだか胸が苦しくなって俯いてしまいました…なんだか…嫌な気分…



席に着くとウィル様が私の横に腰をかけますが…

二人がけのソファなので密着してしまう…


私はそれが申し訳なくて少し離れます。

するとウィル様も狭かったのかこちらに寄ってくるのでまた私は少し離れる…

それを何回か繰り返すと

私の座る場所は体感5ミリ位になってしまいました…!

これでは落ち着かないわ…



「ウィル様…私…多分すごく大きくて…場所をとってしまうようなのです…」

私は腰を浮かし


「どうしてもウィル様にぶつかってしまいます…!あちらのひとりがけソファに座らせていただきますね…申し訳ありません…恥ずかしいです…」

私は顔が赤くなっている予感がして俯きます。

私って…きっと普通の女の子より大きいのだわ!

ウィル様と恋仲の女生徒もすごく小さくて可愛らしいし…

私は座ってるだけでも邪魔になっていてすごく恥ずかしい…!


「メイは…」


ドキドキ…


「メイは悪くない…俺がメイとくっつきたくて寄ったんだ…このまま隣にいてくれ。

ひとりがけソファに移動することは許さない…

俺が離れるから…」

なんと…慈悲深い…!!!

ウィル様はやはり上に立つお人…!

心が広くていらっしゃる…


「私にはもったいないお言葉…ありがとうございます」


ウィル様は私をじっと見つめる。

そしてそっと頬に触れた。


「…お茶を飲もう」

唇に指を添える。

私はお菓子を食べさせてくれるのかな?と口を薄く開けました。

ウィル様はお皿からチョコレートを取ると私の口へと入れてくださいます。

…美味しいわ…

結婚したら毎日美味しい物が食べられるのよね…おかしな所に嫁いで愛されずに美味しい物も食べられない人生より全然いいわよね…


「メイ…」

私の顔にウィル様がお顔を近付けてこられます…

「…いけません…」

嫌だわ!ウィル様ったら…!

またキ…キスをしようとしてませんか…!?

なぜ私にこんなことをするのかしら…

「…なぜだ…婚約者なのに…」


「キスは…好きな人同士でするのですよ…」

私は頬を赤らめて顔を背け言う。


「私とはしなくても良いのですよ…」

ウィル様…

もしかして恋をしたことがない私を哀れに思っていらっしゃるのかしら…

「私は…平気ですよ

恋を探してその方に手を握っていただくので…」


あれ?

今って誰もいない?

言葉が全然返ってこないわ…!

私は顔をそっと上げる。


ウィル様が今まで見たことないようなお顔をしていらっしゃる!!!変な顔色…!!


「メイ…君は俺を好いていないのか…?」


え…?

…どうだろう…

考えた事もなかったわ…


「いえ…」


王族の前で虚偽はいけないわ…


「考えた事もございませんでした…

申し訳ございません…」

深々と頭を下げる。


「お…俺は…君を好いている…」


え…?


「君も同じ気持ちだと思っていた…」


え…


「ウィル様は二人の女性を同時に想える方なのですね」

私は驚きつつも王族の方ってそうなのかも…と思う。

今の王様も側室がいらっしゃるし、全員を愛してらっしゃるのかも!

それなら私も愛していただけるのか…

でも…どうだろう…それはそれで辛いような…


「何を言ってる?俺が好いてるのはメイだけだ」

え…?

「ずっと君を好いている…婚約者に選んだのも…君が一番かわいくて…一番好きだからだ…」


ウィル様のお耳が物凄く赤い…


私はなんだか走ってもいないのに胸がドキドキしてしまう…何かしら…私ったら…!


「俺は結婚しても側室は持たない…君だけでいい…」


「で…でも…もし世継ぎができなかったら…」


「いい…弟に王位を譲って俺たちは辺境にでも行こう…いや…辺境は君を危険に晒してしまうか…?とにかくここじゃないどこかでのんびり暮らそう…二人で」


私は…

ドキドキがどんどん大きくなって下を向く…


「…そんな…あの先ほどの女生徒は…?」


「彼女は乳母の娘だ。

彼女の兄が俺の側近候補でいつも王宮にこっそり付いてやってくる…苦手だ…

彼女は思い込みが昔から激しくて…

彼女の兄も手を焼いている…」


ええ…

彼女とは恋仲ではなかったの…?

すごく親しげに愛称で呼んでいるから…

でも確かに仲良くしているところを見たことはないわ…

私がいつもすぐいなくなっていたから…

私ったらなぜいつもすぐいなくなっていたのかしら…

…だって…

ウィル様がその女生徒と仲良くしてるのを見たくなかったのだもの…


「いつもメイを教室まで送ろうとしたら彼女が来て…君はいつもいなくなってしまう。

彼女さえいなければ…と何度も暗殺を計画したが、乳母と彼女の兄の顔がチラついてやめた」


え?

なんだか恐ろしい事を言いませんでしたか?


ウィル様は私の手をギュウっと握る。

「メイ…俺は君を好いている…君も…同じ気持ちになって欲しい…」

私はドキドキがうるさくて

顔が赤くなってきてしまいます…


ウィル様の手…すごく大きい…


「この手も…誰にも触らせたくない…俺だけの小さなメイの手だ…」


私の手をすっぽり包む。


「他のやつに恋しないでくれ…

その恋の相手は俺がいい…俺にしてくれ…」


そんな…

私…ドキドキしてしまいます!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る