未来の王妃様は恋がしたい

mokumoku

第1話

私はメアリー…高位貴族の下に生まれ落ちました。



上には兄が下には妹がいて私は真ん中のすごく上下に気を使うポジションに生まれてしまいました…!

兄は少しぼんやりしていて

いつもニコニコしていますが、男性にしては少し頼りないのです…

妹は明るく元気ですが、末っ子ゆえに少し自由奔放なところがあります。

私はというと…兄のぼんやりしたところと

妹の自由奔放なところを併せ持って生まれてしまい…

日頃のお勉強がとても大変なのです…!!


ああ…

野原を駆け回りたいです…

でも…座ってお勉強…

わかっています…

ゆらゆら揺れてはいけないのですよね!

やめますやめます…!


なぜこんな事をしているかと言うと

高位貴族なのでもしかしたら王族と結婚することがあるかもしれないからなのです。


…多分私は選ばれないと思うけど…


私はぼんやりと窓の外を眺めます。

兄が剣術の指導を受けていて半べそになっています…


兄は心優しいので暴力的なことが苦手なのです…

…でも…男性だからやらなければならないのよね…


はい

わかっています…

ぼんやりしません。

なんで貴族ってこんなにたくさんいらっしゃるのかしら…

すごくたくさんいるわ!

私…覚えられない!

更に国外の王族まで…

だめだわ…!

私の頭にはスポンジケーキが詰まっているのでは…!?


ハァ…ケーキが食べたいわ…

チョコレートケーキがいいな…




今の王様とお妃様のお子様が私とちょうど同い年の12歳で、王宮にお茶会と称して12歳前後の女児が集められました。


私はマナーのお勉強を思い出しながら

とにかく失敗しないように必死です…

王宮はとても広くて白くて美しい装飾品があったりするのですが…

私は今それどころではありません…


お茶会はお庭で行われ

美しいバラが咲き誇る庭園にイスとテーブルが置いてあります。


妹は末っ子パワーをここぞとばかりに発揮して辺りをキョロキョロと見渡しています。


怒られちゃうよ…!

あまりキョロキョロしちゃ…!

私は妹にそっと注意しますが、しばらくすると妹はまたキョロキョロしちゃうのです…!


わかる…わかるよ…!

気になるよね…

多分もう二度と来ないし…


でも…私…!

怒られたくないのです!

おしりペンペンはいや!


私は視線を少し下に合わせてぼんやりすることにしました。

テーブルの上には色とりどりのお菓子…

あ…チョコレートもあるわ…!

私はチョコレートが大好き…


今回のお茶会はお茶は飲むけど食べ物に手を付けてはいけないと講師の方に言われたわ…

なぜなのかしら…

勿体ないわ…

それならこの食べられなかったお菓子は誰が食べるのかしら…


「あ、お姉様…殿下がいらっしゃいましたよ」


は!いけないいけない…

殿下はここに集まった女児の中から婚約者候補を探すと言われているのです。


恐らく様子や容姿を見るために殿下がテーブルの間を歩く音がします。


このお菓子…

使用人が食べるのかしら…

いいな…

私もここの使用人に今だけなりたい…


「君はチョコレートが好きなのか?」


特にこの丸くて怪しい白いお粉がかかっているこのチョコレート…どんなお味がするのかしら…


「…なぜ答えない…」


あら…殿下の質問に答えていない方がいるようだわ…!すごい度胸ね…どんな方かご尊顔を拝見しましょう!

私はちらりと顔を上げる。

すると…その無礼者はどうやら私だったようで殿下は目の前にいらっしゃるではありませんか!!

「大変申し訳ございません。まさか私のような者に話しかけてくださるとは思わず…感激のあまり言葉を失ってしまいました…」

ドキドキ…


「…なら良いのだ」

殿下は使用人に椅子を持ってこさせると私の隣に腰を掛けました。

えええ…

なぜなの…!?


「どれが食べたい?」

「…あの…」

いいのでしょうか…手を付けてはいけないのでは…?

私は講師の方の

「王族の要求を断ってはなりません」の言葉を思い出してとにかく言われた質問に答えることにしました!

聞かれてるだけかもしれないし…


「私…丸いチョコレートがとても気になっております。」

そうすると殿下は丸いチョコレートを手に取り

私の口元へと持ってきました。

周りが少しざわつきます。

「…あの…」

手を付けてはいけないのでは…?


「いいのだ…私が手に取る分には」

殿下は私の口にチョコレートを入れました。


「うまいか…?」

私はコクリと頷いて

「とても美味しいです。」

外側は少し固くて中はクリーミーでとてもおいしい…!

周りをそろりと見渡すと皆さん席を立って庭から出て行かれます。

妹も…


「君…名前はなんと言う?」

「メアリーと申します。」

「ふむ…」

ドキドキ…

殿下は金色の美しい髪に凛々しいお顔をしています。

…とても同い年には見えないわ…

とても落ち着いていらっしゃる…


「メイと呼んでもいいか?」

「はい。仰せのままに…」


殿下は私にチョコレートをたくさん詰めた箱をお土産に持たせてくださり

その日はお開きとなりました。


お母様はとても興奮してらして

そんなにチョコレートがお好きだったかしら?と私は首を傾げます。


どれもとてもおいしくて

丸いチョコレートもたくさん入っていました。

中には殿下からのカードが入っていて

『また会おう』と書いてあります。

王子様はなんでも様になりますね…私はホゥ…とため息をつきました。




次の日私はなぜか勉強を免除されて妹とお庭で遊んでいます。

お母様はあのお茶会からとてもご機嫌…

家の中心人物がご機嫌だと穏やかでいいわ…!


ふぅ…お外もポカポカしてていい天気…



「お姉様!見て見て!」

妹が私に瓶に入ったカエルを見せてきます。


「まあ…!何かしら?ぬるぬるしてる!」


私は瓶を受け取り様々な角度から眺めます。

…キレイ…

カエルは目がなんか横長ですごいかわいいのよね…

「お庭にいたの!」

そのカエルはとても美しい色をしていて

青くて黒い模様がついています。

見たことないカエルだわ…

新種かしら?


「とてもキレイだけどずっと瓶の中はかわいそうだわ。少し眺めたら逃してあげましょうね。」

私は妹に瓶を返す。


「ええー!私お母様に飼ってもいいか聞いてみる!」

と駆けて行ってしまいました。


私のトーク力では妹を説得することができなかったわ…

妹がお母様の所へ行くと

その日屋敷は騒然となってしまいました。


妹ったら…

お母様がカエルに驚いてしまったのでは?

使用人たちが庭を隈なく探しています。


…カエルかわいいのに…

庭からいなくなってしまうのかしら…


私は使用人の一人に声をかけて

「緑のカエルさんは少し残してくださいませね…」そう囁くと苦笑いをされてしまいました。

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