第140話 将軍ヴァージル
「なんだなんだ。どうしてこうなっただあああああああ!」
「ヴァイシュラ様あああああ!」
辺境の騎士団がコーズケット王国の兵と合流して、カイル王国の騎馬隊と戦ったが惨敗。
そして敗走。
コーズケットの街はカイル王国に占領されていく。
コーズケット王国の、とある都市まで撤退したエチラル王国軍がひと息ついた時、
「エチラル王国の増援軍が来たぞおおお!」
「ヴァイシュラ様がやっと来ただかぁ!」
「ヴァイシュラ様あああああああ!」
エチラル王国の辺境騎士団長と副団長は増援軍の司令部に急いで行った。
「ヴァイシュラ様あああああ!」
「ヴァイシュラ様、来るのが───」
そこに居たのは新将軍ヴァージル。
「なんだ? 来た早々喧しい。無礼な奴らだな! それより貴様らカイル王国如きに惨敗したらしいな」
「誰だあんた? ヴァイシュラ様はどうしただ?」
「ヴァイシュラ? あのクソ女は追い出したぞ。我が新将軍ヴァージルだ」
「はあ? ヴァイシュラ様を追い出したって言っただか………」
「そうよ。公爵様が国王になった。そんな事も知らんのか? この田舎者どもが」
「今回の出陣はヴァイシュラ様の命令ではなかったのか。通りでおかしいと思っただ」
「はあ? 貴様らは、敗戦を女一人の所為にするのか? 情けない奴らよ」
「何とでも言え、おら達は帰る」
「貴様らあああ! 我の指示も無く勝手に帰れると思っているのか! しかも貴族で将軍の我に対して無礼の数々、ただじゃおかんぞ!」
「ほう、今まで戦争で名前も聞いた事も無い青二才が! しかも貴族だと。おら達が戦場で命懸けで戦っていた間、お前らはどうせ王都で報告を聞いていただけだろう。お前らに何が出来る! やってみろよ。ああ゛!」
怒り心頭の騎士団長の迫力にたじろぐヴァージル達。
副団長も剣の柄に手をかけ無言で圧力を発していた。
「帰るぞ!」
騎士団長はそう言うと司令部の陣幕を出て行き、その後を副団長もついて行った。
「ヴァージル様、何と無礼な奴らでしょうか。ぐ、軍法裁判で処刑にしましょう」
「う、うむ。ゆ、許せん! 直ちに軍法裁判の訴求を王都に送れ。死刑にしてやる」
その後もエチラル王国とコーズケット王国の合同軍は敗戦を続け、領土の3分の1はカイル王国に占領された。
カイル王国国王と宰相の会話。
「あはははは、ヴァイシュラが居なくなった噂は本当だつたか!」
「何でも、アレス王国でヴァイシュラの大将軍就任が発表されたようです」
「くくく、コーズケットは手当たり次第切り取れ! あはははは」
その情勢を見ていたコーズケット王国の南の隣国サガミド王国。
「ヴァイシュラの居ないエチラル王国なんぞ怖くもないわ。我が国もコーズケットを切り取るのだあああああ!」
サガミド王国国王の命令により、サガミド王国もコーズケット王国に侵攻を開始した。
その頃、アレス王国にてヴァイシュラの大将軍就任の報により、エチラル王国に激震が走っていた。
ヴァイシュラの威勢により従属していた各地の豪族達が反旗を翻す。
コーズケット王国に出陣した辺境伯も同様だ。
戦場から戻った騎士団長が領地中にヴァイシュラ追放の件を知らせた事で、ヴァイシュラと一緒に戦って来た半農の兵達が、あからさまにエチラル王国に敵意を抱いたからだ。
このまま、エチラル王国に従い騎士団長を処罰したら、農兵達が一斉蜂起する事は間違いない。
農兵達はヴァイシュラと共に戦った強者達。辺境伯の正規兵より実戦経験が豊富で戦えば負けるのは目に見えている。
一方、エチラル王国国王の執務室。
「何故、こうなったあああああ! 何故みんな儂の命に従わん!」
エチラル王国国王は頭を抱えていた。
「陛下、ヴァージル将軍から辺境騎士団の軍法違反による処刑の訴求がありますが……」
「そんな事どうでも良かろう。それどころでは無い。ヴァージルに刑を執行させておけ。そんな事も現場で処理出来んのか。あの口だけ将軍はああああああ!」
程なくしてヴァージル軍もエチラル王国に這々の体で逃げ帰った。
ヴァージル将軍の運命は如何に?
………閑話にこれ以上ページを割けないので、………推して知るべし。
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