第138話 流星刀

 レン達はミノス王国王城に到着した。


「レン様、お久しぶりですわ」

「わんわん」(マスター♪ワン)


 王女リリスとセントバーナードのコボルト・ツヴェルフが出迎える。


「久しぶり、リリス! 元気そうだね」


「元気ですけど……、随分来るのが遅くなりましたね」


「九頭竜の大蛇おろちが出てね。退治していたら遅くなったよ」

(ヴァイシュラの大将軍就任などもあったしね)


「あら、配下の者に任せれば良いのに、また戦えないのに現場に行ったのですか」


「そうなのよ。全く困ったものだわ」


 ヘレナがリリスに同意する。


「む、嫌な言い方だな。だが、良い事はあった。ヴァイシュラを大将軍に迎える事が出来たからね」


「リリス様、ヴァイシュラです。宜しくお願い致します」


 レンが後ろにいたヴァイシュラに顔を向けると、レンの後ろからヴァイシュラが前に出てリリスに挨拶をする。


「リリスですわ。お噂はかねがね伺っておりますわよ。軍神ヴァイシュラ、まさかエチラル王国王女がアレスの大将軍に就任するとは思いもしなかったですわ」


「偶然が重なった結果です」


「しかし、旦那様の周りには美しい女性が次から次へと集まってきて、目を離せないですわね」


「いや〜、仁徳かなぁ? あはは」

(旦那様って、まだ婚約中だけどね)


「モフモフのお陰です」


 とサンディが言う。


(え! まあ、そう言われればそうだけど………)

 納得がいっていないレン。


「そうです同志サンディ、全てはコボルトのお導き」


 ロジーナがサンディと拳と拳を軽くぶつけていた。


「モフモフは敬愛すべき存在ですわ」


「そうよ、同志リリス」

「ヴァイシュラ、あなたも同志なのね」


(はぁ、全くコイツら………)


 レンは意気投合するリリスとロジーナ、サンディを見てため息をつくのであった。


「ところで、レン様。九頭竜の素材があれば、ここミノスでは良い武器を作れますわ」


「うん、そうみたいだね。ジュリアとサンディに聞いたよ。ミノス王国には腕の良い鍛冶師が多いらしいじゃないか」


「そうですわね。稀代の鍛冶師セイシューの愛弟子であるセイシュー十傑が一人、キンジューがミノス王国にいるわ」


「ほう、セイシュー十傑ですか。一度あっておきたいですね」


 ヴァイシュラが話に割り込んできた。


「そう言えばヴァイシュラさんの刀はセイシューの至極の作刀でしたわね」


 リリスがそう言うと、ヴァイシュラは満更でもない顔で腰に差した刀の柄を触る。


「むふぅ、セイシューが晩年に作刀した唯一無二の銘刀、隕石に含まれた金属を使用して作ったと言われる『流星刀』です」


「え、そんな珍しい刀なの?」

「凄〜い。見せて見せて」


 レンとロジーナはヴァイシュラの刀に興味津々だ。


「じゃじゃ〜ん」


 ヴァイシュラはらしくない巫山戯た口調で腰の刀を抜いた。


「「おお!」」


 それは漆黒に輝く黒刀。接近戦で鞘から迅速に抜くために、反りが浅く長さが短い実用的な刀身。


「この短めの刀で良くあの大きさの九頭竜の首を一刀両断出来るな」


(流星刀の長さは九頭竜の首の太さの3分の1も無いんじゃないか?)


「ふふ、それが技術です」


 ヴァイシュラは自慢気にそう言って笑った。


 その後ろでコボルト達。


「わんわんわんわん」(コイツ、フィルツェンって言う名前を貰ったワン)


 ジャーマンシェパードドッグのコボルト・ドライツェンが、ブラッドハウンドのコボルト・フィルツェンをツヴェルフに紹介する。


 ツヴェルフとドライツェンは2匹とも大工のコボルト出身で仲が良いのだ。


「わんわん」(良かったなワン)


「ガフガフ」(ドライツェンだってワン)

「ウォンウォン」(マスターの護衛になったワン)


 ワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルト・丿インが、ツヴェルフに教える。


「わ、わわん」(う、羨ましいワン)


「わ〜わん」(まあねぇ~ワン)


髪を掻き上げ自慢気のドライツェン。

※掻き上げる髪がないので仕草だけです。

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