第126話 ウリセスとミノス国王ヴィクター
レンとサンディはサンディの弟に案内されて、城の奥へと向かっていた。
「サンディの弟の名前は何と言うんだ」
「あ、挨拶が遅くなりました。私はウリセスと申します。陛下」
「ウリセス、宜しくな」
「はい。有難う御座います。そろそろ国王の居住区域に入ります。近衛兵達も見えて来るでしょう。あの〜、モフモフ……。コボルト兵達を召喚しても良いのではないかと思います」
「ん、そうか……、サンディ、何匹ぐらい召喚すれば良いのだ」
「100も居れば充分とは思いますが、それ以上でも構いません」
「ん〜、じゃあ500程度でいいか」
「500! そんなに召喚出来るのですか!」
ウリセスが驚く。
「いや、1万は召喚出来るぞ」
「い、1万………」
唖然とするウリセスを横目にレンはコボルトを召喚した。
「召喚!」
「ワォンワォン」(マスター!ワン)
「バウバウ」(呼ぶのが遅いワン)
「ワンワン?」(問題あった?ワン)
「ウォンウォン」(大丈夫そうだワン)
「ガウガウ」(制圧するワン)
「ガフガフ」(やるワン)
現れた500のコボルト。レンの前にはナンバーズのコボルト達が立っていた。
フラットコーテッドレトリバーのフィア、
シベリアンハスキーのフンフ、
ゴールデンレトリーバーのツヴァイ、
ボルゾイの丿イン、
ドーベルマンのドライ、
ワイマラナーのアハトの6匹だ。
「あああああ、丿イン!」
丿インに抱き着くサンディ。
「ウォンウォン」(この人なに?)
困惑の丿イン。
「ほ、本当に500のモフモフのコボルトが召喚された。それに、なんてモフモフなんだ!!」
更に驚くウリセス。
「良し、行け! 抵抗する者は倒せ」
レンがコボルトに指示するが、
「待って!」
サンディがコボルト達の進行を止めて、
「私と弟が先頭を進むわ。出来るだけ王城内の者達を殺したくないの」
「武器を捨てて、抵抗は止めて! リリス王女の部隊が反逆者を成敗しに来ました!」
「これは、襲撃ではない! 反逆者達への誅罰だあああああ」
サンディとウリセスが大声をあげて進み、その後をレンとコボルト達が進む。
ミノス王城内で突如発生したモフモフ達の大行進は、王城内を一変させた。
静かだった王城内がサンディ達の叫びとコボルトの声、見ている者達の囁きがざわめきと変わる。
そのうち、サンディとウリセスと親しい近衛兵も進軍に加わった。
モフモフ好きの女性近衛兵が多いのは致し方ないか………。
「きゃあ! ………可愛い!」
「なんなの?」
「こんな可愛い生き物がいるなんて!」
女性の近衛兵やメイド達は、目を見開き感動の眼差しでコボルトの行進を見詰める。
「ウォンウォン」(なんだかワン)
「ワォンワォン」(いつもと違うワン)
丿インとフィアは違和感を感じ、首を傾げながら歩く。
しかし、中にはリリス王女を好ましく思っていない者もいる様で、
「王城に魔物を連れ込むとはけしからん!」
「早々に出て行け!」
剣を抜いてレン達の行方を塞ぐ。
「ガウガウ」(抵抗だワン)
「ガフガフ」(倒すよワン)
先頭で警戒していたドライとアハトがレンの顔を見る。
レンが頷くと、ドライとアハトはマチェットを抜いて行く手を遮る兵達を倒して行く。
「抵抗するなあああ!」
「リリス王女の手勢だあああ!」
「反逆者達を成敗しに来たああああ!」
「手向かう者は反逆者の仲間と見做す!」
同行している兵達が大声で叫び。大勢のコボルトの数を見て、立ち向かう腕自慢の近衛兵達が一瞬でコボルト達に倒されると、行く手を塞ぐのを止めて、両脇に避けていく兵達。
「何を騒いでおる!」
「貴様らは何者だ!」
奥の部屋から現れた数人の男達。
きらびやかな服を着た国王とそのお付の者達だ。
「ヴィクター! 国王の仇、お命頂戴致します!」
ウリセスが叫ぶ。
「ウリセス、サンディ! 貴様らあああ! 我に歯向かうかあああああ!」
「あれがリリスの父の仇か? 殺れ!」
レンがコボルト達に命令を下す。
「な、何をするうううう!」
「うああああああああああ」
「助けてええええええ!」
コボルトの群れが一斉にミノス国王ヴィクター達を飲み込んでいった。
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