第117話 ジュニア達

 ここは、アレス王国王城にある国王のいつもの執務室。


「そう言えば、最近王城内で若いコボルトを良く見かけるんだけど、何か特別な仕事でもさせてるの? ちっちゃいアインスとか、ちっちゃいツェンとかがいたな」


「可愛いかったですわ」

 リリスは子供のコボルトを思い出してうっとりしている。


 事務が一段落して、レンは何の気なしにヘレナに尋ねたのだが、ヘレナは意外な反応をした。


「おお! 気付いた。ふふふ、実はさぁ大変な事を発見したのよ」


「なんだよぉ。勿体ぶってるなぁ」


「へへへ、祖父がアレスのコボルト達を研究しているのは知ってるでしょ」


「うん、知ってる」


「色々生態とかが分かって来てるんだけど、その中でも………、とびきりの発見があったのよ。所謂、世紀の大発見!!!」


「いったいなんだよぉ。引っ張るなぁ」


「あはは、レンがテイムした野生のコボルト達がいるでしょ」


「うん、いるね」


「レンのテイムした野生のコボルトを仮称第一世代と言ってるんだけど、その子供達を仮称第二世代と呼んでいるのよ」


「仮称は無くても良いんじゃない?」


「んじゃ、仮称を取るわ。まあ、それはどうでも良いんだけど。その第二世代の子達はねぇ、………読み書きが出来たのよ! 凄いでしょ。ねぇねぇ凄いでしょ」


「そりゃ凄いね!」


「流石に喋る事は出来ないけどね。野生のコボルトは読み書きなんか出来ないわ。アレスのコボルトの子供だけ特別なのよ。環境は確かに生まれた時から人間と一緒にいるってのはあるけど、より長く人間と一緒に住んでる第一世代は読み書きが出来ないのよ」


「ほほう」


「多分、レンのスキルが影響してると思うわ。特にナンバーズの子供達は、他の子と比べて出来が良いわ」


「そうですわねぇ。可愛いですわ。特にアインスの子達とか、ツェンの子達は毛玉がチョコチョコ歩いている様で、思わず抱き締めたくなりますわ」

 リリスも子供立ちの事は大好きの様だ。


「まあ、まだ研究段階なので詳しくは、分かってないけどね。もう少し調べてから、もうちょっと成果を出してからと思ってて、レンに報告するのが遅れたわ」


「なるほど、それで研究の為に王城にいるのか?」


「ん、働いて貰ってるわよ。事務作業は死ぬほどあるのよ。コボルト達は喜々として手伝ってくれるわ。とっても助かるし、事務女子達の能率もアップよ」


「逆に女子達の効率が落ちそうだけどね」


「そこは、ほら、飴と鞭よ。効率が落ちた女子は第二世代、ああ、通称ジュニアね。ジュニアがいない部屋で仕事をする事にしてね。効率の良い女子はジュニア達と一緒に仕事が出来る様にしたわ」


「考えたなぁ」


「ところで、コボルトは異なる形態と言うか異なる種が多くいるけど、ミックスにならないのかしら?」


「それはね。まだ研究中なんだけど、どうやら自分と似ている者としか番いにならないようだわ。近い種であれば番いになる事はあるみたい」


(むむ、そうか。地球の知識で勝手に秋田犬とか、柴犬とかと思ってたけど、純粋な犬種とは限らないのか?)


 まあ、結局可愛いければOKと言う事で


 チッチャイことは気にするな!  それ、ワカチコワカチコ!

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