第51話 オリハルコンの剣

「レン、ダンジョンに行くなら剣ぐらい用意しなさいよ! 丸腰で行く気?」


「そうだね。ヘレナの言う通りだ」


 ヘレナの言葉に素直に従い、ジュリアの錬金術の工房に来たレン達。


「よう! ツェン、元気にやってるか?」

「バフバフ」(マスター、久しぶり)


 レンはマチェットを作っているチベタンマスティフのコボルトであるツェンに声を掛けて、頭を撫でる。


「わんわん?」(マスター、今日はどんな用事?)


 プードルのコボルトがレンに近付き、甘えた声でレンに声を掛ける。


 ジュリアに錬金術を仕込まれているボーダー・コリーのコボルトと、シェットランドシープドッグのコボルトも作業を止めて、レンをキラキラした目で見詰めている。


「あー、ジュリアさんはいるかな? 剣が欲しいんだけど」


 レンはプードルの頭を撫でながらジュリアを呼ぶ。


「わんわ〜ん」(ジュリアさ〜ん)


 プードルのコボルトはジュリアを呼びに行った。


「あら、珍しいわね。どうしたの?」

「剣が欲しいんだけど」


「誰が使うの」

「俺」


「あら、何かあったのかしら?」

「ダンジョンに行こうと思ってね」


「ジュリアさん止めて下さいよ」

「ヘレナちゃん。レンくんも男の子だからね。そんな気分になる事もあるわよ」


「ですよね〜」

「レンは黙っててよ。ジュリアさん、レンは弱々なんですよ。戦闘でもしもの事があったら大変だわ」


「あはは、ノズチの戦闘服と、このオリハルコンのショートソードがあれば何とかなるわよ。私が使ってたモノだけどあげるわ」


「良いんですかぁ。有難う御座います」


 レンはジュリアがマジックバッグから出したオリハルコンの剣を受け取り、鞘から抜くとしげしげと眺める。


(ほう、いい輝きだ)


 レンは剣の事はあまり知らないが、しかし切れ味の良い素晴らしい剣だと言う事を直感した。


「良いのよ。私はここに来てとっても充実しているから、レンくんには感謝しているもの」

 ジュリアはツェンを撫でながら言う。


「勿論、後でお代は払いますよ。借りは怖いので………ジュリアさんにもレンを止めて貰おうと思ったのに当てが外れたわ」


 ヘレナはボソッとジュリアに告げる。最後は小声で呟くように言っていて良く聞こえない。


「まあ、それならそれでもいいけど、他意はないわよ。本当に感謝してるわ。レンくんも息子のようにかわいいしね」


「あははは」

 レンは笑って誤魔化すが、一瞬ヘレナが真剣な目でジュリアを見詰たのを見逃さなかった。


(実は仲が悪いのか? そんな事ないよな)


 そんなヘレナを見て、ジュリアはヘレナにコソコソと囁いていた。


「気持ちは分かるけど、本人の気持ちを考えて、大きな心で見守るのも大事よ。商会の女の子達もワンチャンス狙ってるからね」


「え? それは気付かなかったわ。あの子達……。釘を差しとかなくちゃ」


とヘレナが決意の目をしていた時。


「バフバフ」(俺も行きたいワン)

「ガウ!」(駄目だワン!)

「ガフゥ」(そうそう、定員オーバーワン)


 ツェンも行きたそうにしていたが、ドライとアハトに止められていた。

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