第41話 薬草パニック3

「えー! レンくんに騙された!」


「おいおい、領主様に向かって人聞きの悪い事は言ってはいけないよ。悪い領主様なら不敬罪で打ち首だよ。それにレン様は嘘は一切言ってないよ。良く思い返してみなさい」


「そ、そう……、かもね」


「はぁ。それで、やっていけそうかい。カミラに明確なビジョンがあって、遣り切れて、尚、レン様に迷惑を掛けないなら、私は手を引くよ」


 イアンはため息をつくが、それでも優しくカミラを諭す。


「イアンさんは、その、明確なビジョンがあるんですか!?」


カミラはイアンに尋ねる。


「明確ではないけど、現時点である程度の目算は立てた。後はレン様と詳細を詰めればイケると思って手を上げたよ」


「どんなビジョンよ」


「レン様、すいません。この村の為になると思いますので、今しばらく私とカミラの会話に付き合って下さい」


 イアンはレンにそう断って、レンが頷くのを見てからカミラを向いた。


「カミラはこの村に住んでる人達の事を知ってるかい?」


「アンナさんとヘレナさん。ジュリアさん?」


「どんな人か知ってる?」


「優しい人」


「商売に繋がる?」


「品物を買ってくれる」


「いいかい、商売は情報が大切なんだ。良く覚えておきなさい。アンナさんは領都の薬師ギルドの元総ギルドマスターだ。薬草をそのまま売らないで回復薬にしてから売れば、売上は倍増だよ」


「ええええ! そうなの?」


(えええええ! そうなの? お金持ってるとは思ってたけど。偉い人だったんだ)


 レンも驚くがポーカーフェイスを装う。


「旦那のバークさんは領都の大工ギルドの元ギルドマスターさ。私がミニ領都って言ってたのは覚えている?」


「覚えているわ。それがなに?」


「領都の門を作ったのはバークさんだ。バークさんは有名な建築家でもある」


「うっそー?」


「そしてジュリアさんは多分カミラも知っている。あの街の錬金術ギルドの元ギルドマスターだ。材料さえ揃えば色々な魔道具を作って貰える。更にヘレナさんはテイマーズギルドのサブギルドマスターだけど」


「だけど?」


「祖父がプロフェッサーと言われる魔物博士で、テイマーズギルドのギルドマスターだよ。叙爵していて今は伯爵だね。ヘレナさん、プロフェッサーには、ここにテイマーズギルドが移った事を話をしていますよね。そしてテイマーズギルドの補助金をこの村が貰えますよね」


「うん。祖父の承諾を持って移転の手続きを済ませたわ、補助金も来期から貰えるはず」


「え! 移転したの?」


レンが驚きヘレナに尋ねる。


「この前、レンが冒険者ギルドで問題を起こされたときに、移転の手続きは完了したわ」


「カミラ、どうだい。錚々たるメンバーじゃないか。この村にはお金があるし、モノも作れる。そしてレンさんはこの国の王子だ。継承権も失っていない」


「「「え! 王子?」」」


 レンとヘレナとカミラは口を揃えて驚いた。


「先日ミッキー侯爵のクーデターが成功した。今は国王の姓を名乗りヒダ国のアネガコージ国王となった」


「それ、本当?」

 レンが聞く。


「本当ですよ。レン王子」


「はぁ、そうなったか………」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る