第39話 薬草パニック
レンは冒険者ギルドを出たその足で、テイマーズギルドにヘレナを迎えに行く。
そしてヘレナと一緒にイアンとカミラが働く商会に行って、ノズチの皮を買い取って貰い、鉱石を購入した。
(初めから商会で買い取って貰えば良かった)
とレンは思う。
途中でヘレナに冒険者ギルドの事を話したら、大笑いされた。
「あははは、私も一緒にギルドに行けば良かったわ。あのギルマスの焦る顔を見たかったわ」
(解せない)
レンの気持ちは晴れない。なんだかムシャクシャする。
「冒険者ギルドに嫌がらせしたいなぁ」
と呟くレン。
「この街の冒険者ギルドの管轄にある薬草を根刮ぎ取っちゃおうか?」
ヘレナが不穏な事を言い始める。
「この街の人に迷惑にならないかな?」
「大丈夫だって。不足だったら商会で他の街から買って来るでしょ、ちょっと値上がりするだけよ。冒険者ギルドの売上が極端に落ちるだけよ」
「冒険者に迷惑にならない?」
「冒険者はこの街に縛られている訳ではなくじゃないわ。暮らし難くなったら別の街に行くだけよ」
「そっかぁ、コボルト達に頼めば出来ると思うけどね」
開拓村に帰ったレンがその話を何気なくしたら、その話はコボルト中に広まった。
現場にいたドーベルマンのコボルト・ドライとワイマラナーのコボルト・アハトからも生の声で広まる。
開拓村のコボルト達の数は、誰も把握していないが、いつの間にか300を超えていた。
それぞれ採取や狩り、訓練をしているので日中や夜間の出入りも多く、レン達は特に変化があることを知らない。
コボルト達は嗅覚に優れているので、冒険者達に見つからないように、薬草を採取する事はお茶の子さいさいだ
いつの間にかレンが気付かないうちに辺境の街の周辺から薬草が消えた。
その後、(最近ヤケに薬草が多いなぁ)と思ったレンが街の錬金術ギルドに薬草を売りに行ったら断られた。
(だったら他の街で売ろう)と思って他の街で薬草を売るレン。
実は………。ギルマスが恐る恐る領主にノズチの事を問い合わせた。
レンは辺境の村の領主である事を告げたつもりが、ギルマスはレンが辺境の街の領主の関係者だと思ったのだ。
領主からはノズチの事を知らないと言われて、レンに騙されたと勘違いしたのだ。
コボルトに脅された事を冒険者達に見られた事もあり、ギルマスは烈火の如く怒り捲り街の他のギルドマスター達にも通達しレンを締め出すと同時に捕縛しようとしていた。
カミラとイアンはその事を知ると辺境の村を訪ねてきた。
「なに! ここ、本当に辺境の……村?」
巨大な防壁に囲まれた城塞都市と言っても過言ではない姿がそこにあった。
大きな門の前でカミラが叫ぶ。
「フンフちゃああああん」
偶然にもその日の門番の責任者はシベリアンハスキーのコボルト・フンフだった。まあ、フンフ以外でも最初の五匹ならカミラの事は知っているのだが。
「バウバウ」(カミラさん久しぶり)
大きな門番が開いてフンフと数匹のコボルトが出て来た。
「フンフ〜」
カミラはちょっと泣きながらフンフに抱き着く。
フンフはカミラの馬車の御者席にカミラと一緒に乗ると、領主の館に案内するのであった。
廃墟と化した村。レン達が住む事で少しは変わったと思っていたが、村の様子は想像の斜め上をいき、想いもしない姿に生まれ変わっていた。
「これ、領都と変わらないじゃん」
「ミニ領都と言っても可笑しくないな」
イアンとカミラはフンフに案内されて領主の館の中に誘われる。
「こんにちは、イアンさん、カミラさん。遠い所をようこそ」
レンとヘレナが出迎え、その後ろには秋田犬のコボルト・アインス、ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイ、ドーベルマンのコボルト・ドライ、フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィアが並んでいた。
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