第29話 アンナとバークとジュリア

 辺境の街に着いたレン達は『朝焼けの光』の四人と別れて、アンナの家に向かった。


 門のノッカーを鳴らすとアンナが迎えにきた。


「あらあら、アイちゃん。お帰り」


「ワフワフ」(また来たワン)


 秋田犬のコボルト・アインスはアンナに抱きついて、アンナもアインスを優しく撫でる。


「美味しいと評判のお菓子です。食べて下さい」


 レンは来る途中で買ったお菓子をアンナに渡す。


「あらあら、そんな気を使わなくても良いのに。有難うね、美味しそうなおもたせね。みんなでいただきましょう。さあさあ、こちらにどうぞ」


 アンナはアインスを優しく迎える。招かれた庭のダイニングテーブルでは、今日もジュリアさんとティータイムを楽しんでいたようだ。


「こんにちはレンくん。あら、新しい子じゃない?」


「はい。ツェンと言います」


「バフバフ」(こんにちワン)


「モフモフの毛並みね」


「はい。仲間の中でも一番モフモフなんですよ」


(しめしめ、ジュリアさんはツェンを気に入ったようだ)


「こっちにいらっしゃいな」


「バフ♪」


 ジュリアに呼ばれてチベタンマスティフのコボルト・ツェンがジュリアの元に行くのを見守り、レンはアンナに話し掛けた。


「バークさんはいますか?」


「あら、バークに用があったの? 家の中にいると思うわ。あなたー!」


「なんだい呼んだかい。おお、レンくん久しぶりだな。どうした、辺境の開拓村に行ってたんじゃないのか」


「ええ、辺境の開拓村から今戻りました。今日はバークさんにお願いがあって来たのです」


「なんだい?」


「辺境の開拓村の家屋が荒れていて、そのまま住めそうに無いので、バークさんに改築か建て替えをして欲しいのです」


「ふむ、分かった。家の事は専門だから任せておけ。ただなぁ、弟子達がここにはいないので、人手が足りないぞ。俺一人では時間がかかるし、歳だからなぁ。この街で雇って連れて行くか?」


「人手はコボルトでは駄目ですかね。コボルトならいっぱいいるのです」


「いっぱい? 五匹以外にか」


「あはは、ちょっと増えて今は35匹になりました。ツェンもその中の1匹です」


「随分増えたなぁ。ふむ、力は有りそうだな。やってみるか?」


「バフバフ」(力はあるワン)


「あら、ツェンちゃんは私が錬金術を教えるわ」


ジュリアがツェンをモフモフしながらバークに告げる。


「まあ、他にもいっぱいいるので、なんとでもなると思います」


「良し分かった。いつ出発する?」


「いつでも! 早ければ今日明日にでも村に戻りたいくらいです」


「俺達も住んでも良いのか?」


「勿論大歓迎です。家も自由に作り変えていいですよ」


「あら、良い話ね。アイちゃんと一緒に住もうかしら」


「ワフ」(住もうワン)


「アイちゃんも賛成しているようね」


「私も開拓村に行くわ。良いわよね。レンくん、ツェンちゃん」


「バフバフ」(マスターが良ければ問題ないワン)


ジュリアもそう言い出して、ツェンはレンを見る。


「勿論、ジュリアさんも大歓迎ですよ。荒れた家しかありませんが、好きに使って下さい」


「へぇ、家を貰えるのね。バーク、私の家も改築してね。錬金術が出来る家が良いわ」


「おう、任せておけ」

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